なぜイージス・アショアの秋田・山口配備は断念したのか?

自衛隊
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目的は海自の負担軽減

北朝鮮の弾道ミサイル問題を受けて、日本は洋上のイージス艦と陸上のペトリオット・ミサイル(PAC-3)という二段構えの防空体制を整えてきました。しかし、警戒体制が常態化するにつれて、海自の負担と疲労が積み重なり、イージス艦が本来担うべき艦隊防空にまで手が回っていません。

そこで、イージス艦を長引く警戒任務から解き放ち、海自の負担を減らすべく「イージス・アショア」を導入する案が浮上しました。

これはイージス艦の「陸上版」であり、もともとはアメリカ・ハワイ州にテスト施設が作られた後、NATO加盟国のルーマニアとポーランドに配備されました。さらに、対中国を見据えて戦略的に重要なグアム島にも配備予定です。

「陸上版」と呼ばれるだけあって、艦橋のような地上施設にはイージス艦と同じレーダーが設置され、「SM-3ミサイル」を使った弾道ミサイル迎撃能力を持ちます。

アメリカのイージス・アショア (出典:アメリカ軍)

そして、イージス艦と違って整備・補給を必要とせず、交代要員さえいれば24時間体制で常時警戒できるのが利点です。

コスト面では1基あたり約2,000億円(関連施設を含めたら3,000億円)と高額ですが、ローテーションで最低3隻は必要なイージス艦に対して、1基で24時間365日フル稼働することから、結果的には「安上がり」といえます。

しかも、1基の防護範囲は約2,000kmとされており、最低2基で日本全国をカバーできる計算です。今まで6〜8隻のイージス艦で同じエリアを守ってきた点を考えると、意外とコスト面で優れた装備であったのが分かります。

よって、日本海側の北と西に1基ずつ配置して全国をカバーしつつ、狙われやすい首都圏を二重防護するつもりでした。また、海自と比べて人員圧迫が「マシ」な陸上自衛隊に運用させて、海自イージス艦の解放を目指したのです。

幻となった秋田・山口への配備

こうして日本海側の北と西で候補探しが始まったわけですが、早期配備と広い敷地が求められた関係で、既存の新屋演習場(秋田市)、むつみ演習場(山口県・萩市)に白羽の矢が立ちました。

カバー範囲を示した図(出典:防衛省)

ところが、秋田の候補地は市街地のすぐそばにあったため、住民から強い拒否反応がありました。住民側は騒音問題やレーダー波による健康被害、優先攻撃目標になる恐れから反対意見が多く、防衛省も説明会を通じた地元対応を行いました。

これらは自衛隊施設にはある意味「付き物」で、実際に騒音・健康問題については大きな影響がないと説明され、一定の理解を得ています。

しかし、重要施設であるがゆえに狙われやすい点は否めず、市街地に近い新屋演習場でなければならない理由をしっかり説明できませんでした。

さらに、発射した迎撃ミサイルのブースターが住宅地に落下する可能性が発覚したのです。このブースターは敷地内や海上に落とすと説明していたところ、後で難しいと判明しました。一応、改修すれば技術的には解決可能とされたものの、その分だけコストが増えるうえ、すでに与えた不信感は取り返しがつきません。

ほかにも、説明資料に誤りがあったり、住民説明会で防衛省職員が居眠りするなど、度重なる落ち度が目立った結果、もう「反対の流れ」が確定してしまいます。こうした影響は山口の候補地にも及び、2020年には計画中止となりました。

結局、ブースター落下問題を中心にきちんとした説明や対応ができず、不信感で地元調整を破談させた政府・防衛省に責任があります。もっと誠意ある対応をしていれば、少しは結果が違ったかもしれません。

代替の「イージス艦」を建造へ

その後、代替として「イージス・システム搭載艦」を2隻建造することになり、当初目指していた海自の負担減どころか、むしろ増える結果になりました。

この代替艦は従来と異なってかなり大型化する見込みで、運用も艦隊防空ではなく、最初から弾道ミサイル防衛に主眼を置いたものになります。

ちなみに、イージス・アショア用に購入した「SPY-7レーダー」を含む主要構成部品はそのまま代替艦に転用される予定です。

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