普通科中隊の頼れる火力として
地上戦で勝敗を分けるとされるのが「火力」の優劣であり、敵を阻止する防衛戦でも、攻勢をかける場合でも、火砲なくして成功はありません。
2022年のロシア・ウクライナ戦争でも大規模な砲兵戦が行われたように、「火力」の必要性は今も昔も変わらないわけです。
自走砲やロケット砲などは大火力を誇る反面、これら大型兵器は高価で運用も大変という事情があります。そのため、最前線で活動する兵士にとって、身近で頼りになる火力のひとつとして「迫撃砲」が挙げられます。
むろん、迫撃砲も大きさと種類によって運用上の複雑さが異なり、自衛隊で一番大きい120mm重迫撃砲は自走砲に負けない威力を発揮できる一方、車両での牽引を必要とします。
これに対して、陸上自衛隊で中隊規模の火力として重宝されているのが軽量の「81mm迫撃砲」です。これは分解すれば、3〜4名の隊員で運べるため、普通科隊員(いわゆる歩兵)にとっての身近な火砲でしょう。
⚪︎基本性能:L16 81mm迫撃砲
全 長 | 1.28m |
口 径 | 81mm |
重 量 | 36.6kg |
射 程 | 最大5,650m |
発射速度 | 最大20発/分 |
操作要員 | 3名 |
価 格 | 1門あたり約1,000万円 |
陸自の普通科中隊は通常200名ほどで構成されますが、この中隊の火力を支えるのがイギリスで開発されて、米軍も使う「L16 81mm迫撃砲」。
それまでの「64式81mm迫撃砲」の後継として1990年代に導入されたもので、64式の重さが56kg、射程が約3,500mだったのに対して、L16では約3割の軽量化と1.6倍の射程延伸を実現しました。
アルミ合金を使ったおかげで、同じ81mm級の迫撃砲のなかでもズバ抜けて軽く、隊員の負担減と随伴弾薬の増量につながりました。また、分解輸送による山岳地帯への展開もできるため、国土の7割が山地の日本に適した火力といえます。

81mm迫撃砲そのものは照準手と装填手、距離にあわせて装薬を調整する弾薬手の3名で運用しますが、通常は全体統括と指示を行う班長も加わります。
砲身はライフリング構造を採用しておらず、むしろ砲弾側に翼を付けて安定軌道を描きます。そして、砲弾は通常の榴弾以外にも、発煙弾や照明弾も発射可能です。
気になる威力は、さすがに120mm重迫撃砲には劣るものの、至近弾でさえ敵兵をなぎ倒し、直撃すれば軽装甲車両ぐらいは大破させられます。
良い事例ではありませんが、装薬量の誤りによる演習場外への着弾事故では、40m離れた車の窓ガラスが割れました。この事故は装薬調整の重要性が分かると同時に、81mm迫撃砲の威力を示したものでしょう。
また、発射速度はL61の方が120mm重迫を上回り、敵に対する継続的かつ濃密な射撃では軍配が上がります。重迫撃砲や榴弾砲を待つ余裕がない状況では、その場を乗り切るための貴重な火力として期待されています。
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