120mm重迫撃砲の威力

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普通科部隊を支える大火力

陸上戦闘には「大砲」による砲兵戦が付き物であり、火力の優劣がしばしば勝敗を分けます。しかし、榴弾砲や自走砲を大量に用意できる国は限られており、保有していたとしても実際に戦場に投入できるかは別問題になります。そこで、少人数での運用が可能で、榴弾砲等よりも廉価な火力として重宝されるのが「迫撃砲」です。

榴弾砲や自走砲よりも圧倒的に軽いにもかかわらず、敵に対して十分な打撃を与えることができ、連続射撃と生産性の点でも有利な迫撃砲は登場以来、歩兵部隊の貴重な火力として世界各国で運用されてきましたが、その重要性は今も全く変わりません。そんな迫撃砲の中でも、大火力を誇るのが陸上自衛隊も使う「120mm迫撃砲」です。

⚪︎基本性能:120mm迫撃砲RT

全 長2.08m
口 径120mm
重 量582kg
射 程最大8.1km(通常弾)
ロケット推進弾は13km
発射速度通常:毎分6発
最大:毎分20発
操作要員5名
価 格1門あたり約3,400万円

自衛隊の普通科連隊に配備されている120mm迫撃砲は元々フランスが開発したものであり、89式小銃の生産でも有名な豊和工業がライセンス生産しているものです。そのため、開発国のフランスはもちろんのこと、アメリカ海兵隊やイスラエル軍でも榴弾砲等を補完する火力として採用されています。

陸上自衛隊では1992年の採用以来、現在に至るまで約500門が調達されており、普通科連隊の重迫撃砲中隊の主要装備となっています。普通科の隊員にとっては、大砲としては「軽い」割には十分な破壊力を持つため、貴重な大火力として期待されており、「重迫」「120迫」の愛称で親しまれています。

本砲は牽引用のタイヤが付いているため、高機動車で引っ張って移動することが可能であるうえ、CH-47Jに吊り下げて空輸することもできます。迫撃砲といえども、580kg以上の重さがあるので人力で行う射撃陣地での細かい位置調整は大変ですが、それでも榴弾砲よりは機動力に優れた「お手軽な」火力なのです。

射撃陣地に展開された120mm迫撃砲(出典:陸上自衛隊)

気になる性能ですが、まず射程は通常弾であれば8.1kmと言われており、迫撃砲としては長射程と言えます。ただ、榴弾砲や自走砲と比べると見劣るので、本格的な砲兵戦ではあくまで補完装備や歩兵の支援火力としての役割になるでしょう。

ちなみに、迫撃砲といえば、砲弾を装填したらすぐに発射されるイメージがありますが、120mm迫撃砲ではロープを引っ張って好きなタイミングで砲弾を発射する方法も選択できます。

撃てる砲弾については、通常用いられる榴弾以外に、装甲車両を狙う対軽装甲弾、煙幕弾、照明弾のように多岐にわたっており、状況に応じて適切な弾を放ちます。また、ロケット補助を使う推進弾も撃てますが、この場合は射程を13kmまで伸ばすことができます。

迫撃砲の利点の一つとして、榴弾砲よりも装填が簡単なため、連続射撃に優れている点がありますが、それは本砲でも同じであり、発射速度は最大で毎分20発となっています。しかし、実際に毎分20発も撃つには相当な手際の良さを要するのみならず、砲身が加熱で真っ赤になって砲の寿命を縮めてしまいます。したがって、通常は多くても毎分6発ほどの発射速度であり、毎分20発というのはよほど切迫した状況ではない限り実践しないしょう。

また、命中精度については一般的には榴弾砲より低いと言われていますが、結局は計算して照準を合わせる砲兵の能力次第でしょう。そもそも迫撃砲は容易に連続射撃できる利点を生かして、一発必中というよりは数で勝負する装備なので、命中率で榴弾砲に及ばないのは仕方ありません。ただ、昔から射撃の腕に定評のある自衛隊ですが、皮肉にも予算の制約で実弾射撃があまりできないことから、逆に一発必中に近い命中率を叩き出せるそうです。

普段の訓練では広大な東富士演習場でない限り、射程を抑えた射撃を実施しますが、この場合は砲弾の装薬量を減らして飛翔距離を意図的に短くします。以前、この装薬量を間違えたことから演習場外に着弾してしまった事故も発生しており、少しの計算ミスや照準の狂いが大幅な着弾誤差につながることを改めて示したケースとなりました。

発射する120mm迫撃砲(出典:陸上自衛隊)

120mm迫撃砲から発射された砲弾はいわゆる放物線を描いて飛翔して着弾するわけですが、その威力は装甲車両が簡単に吹き飛ぶレベル。これが建物や陣地であれば、破壊されて中にいる人間も容易に死傷するダメージを与えます。これだけの打撃力を誇る火砲が比較的安価かつ軽量なので、最前線の歩兵部隊に配備したくなるのは当然ですね。

このように普通科連隊を支える大火力の120mm迫撃砲ですが、派生型として自走式の96式自走120mm迫撃砲というのも存在します。これは、120mm迫撃砲を装甲車に積んだものであり、射撃時はハッチを開いて撃つタイプです。通常の牽引式よりもさらに機動力に優れた96式自走120mm迫撃砲ですが、生産数はわずか24両であり、その全てが北海道の第7師団に集中配備されています。そのため、北海道以外で見かける機会は滅多になく、あまり馴染みのない装備と言えます。

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