雪国部隊に欠かせない車両
全国各地に駐屯する陸上自衛隊は、それぞれの土地に合わせた装備を有していることがあり、その一つが北海道や日本海側の部隊が運用する「雪上車」です。世界的にも稀な豪雪地帯であるこれら地域では、軟らかい雪の上を沈むことなく走行できる雪上車が人や物資の輸送に欠かせません。
⚪︎基本性能:78式/10式雪上車
78式雪上車 | 10式雪上車 | |
全 長 | 5.2m | 4.65m |
全 幅 | 2.5m | 2.25m |
全 高 | 2.43m | 2.38m |
重 量 | 6t | 5t |
速 度 | 時速45km | 時速45km |
乗 員 | 2名+12名 | 2名+10名 |
積載貨物 | 最大1t | 最大1t |
価 格 | 不明 | 1両あたり約3億円 |
陸上自衛隊の各部隊は駐屯地での訓練以外に、広い敷地を持つ演習場で戦闘訓練を行うことが多く、演習場内での人員や物資、装備の移動が必要になります。ところが、豪雪に見舞われる地域の場合、広大な演習場が深い雪に覆われるため、こうした自然環境でも安心して走行できる雪上車が必須装備なのです。
キャタピラ式の雪上車ですが、戦車等のキャタピラが鉄で出来ているのに対して、本車は滑りにくい強化樹脂を採用しており、地面に接する部分にはスパイクを埋め込むことで凍結した路面でも難なく走行できるのです。

この雪国ならでの工夫は、初の国産雪上車を開発した新潟県の大原鉄工所の独自技術であり、同社は自衛隊発足以来ずっと雪上車を製造、納入してきた実績を持ちます。もちろん、78式および10式雪上車も同社の製品ですが、豪雪でも安定走行できる点に加えて高く評価されているのが信頼性及び耐久性です。
例えば、冬の寒い朝はエンジンがかかりにくいことに悩まされる家庭もあると思いますが、自衛隊の雪上車はこのような悩みとは無縁です。また、雪上車は他の装備と比べてほとんど整備を必要とせず、冬が終わって放置しても次の冬にはそのまま使えると言われています。ただ、入念な整備で有名な自衛隊が実際に1年も装備を放置することは考えづらいですが。
このようにタフな特徴も有する雪上車は、主に冬季訓練を行う演習場で装備や食糧・弾薬などを積んで輸送する任務に従事しますが、他にもスキーを履いた隊員をロープで牽引したり、連絡や偵察任務にも使われることがあります。
よりコンパクト、そしてオートマ化した10式雪上車
採用以来、500両以上も生産された78式雪上車は北海道から東北、北陸、山陰に至るまでの積雪地で重宝されてきましたが、老朽化に伴って後継である10式雪上車の配備が進められています。
10式雪上車は78式よりもコンパクトになった結果、乗員数は2名減の10名となったものの、73式大型トラックへの搭載が可能となったので、従来のように大型トレーラーを必要とせず、演習場への移動が容易となりました。
そして、もう一つの大きな変更点が「オートマ化」です。78式雪上車は5速のマニュアル車(ミッション)でしたが、10式は4速のオートマ車になっており、普段からオートマに慣れている若い隊員にとっては運転しやすくなりました。各部隊は徐々に10式雪上車に更新していく予定ですが、多数調達された78式雪上車を全数置き換えるには時間がかかるため、しばらくは両者が豪雪地帯の部隊を支える光景が続くでしょう。
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