日本の防空を支えてきた拡張性に優れた名機
日本の空を守る航空自衛隊は約320機の戦闘機を運用していますが、その中で主力を務めているのがおよそ40年間も防空任務に従事しているF-15J戦闘機です。一般人にとって最も馴染みのある戦闘機といえるこの機体は抜群の信頼性から航空ファンのみならず、実際に操縦する現場パイロットからも非常に人気があり、世界各国で使われているベストセラーでもあります。
⚪︎基本性能:F-15J戦闘機
全 長 | 19.4m |
全 幅 | 13.1m |
全 高 | 5.6m |
乗 員 | 1名 複座タイプは2名 |
速 度 | マッハ2.5 (時速3,087km) |
航続距離 | 約2,800km |
兵 装 | 20mm機関砲×1(固定) 対空ミサイル |
価 格 | 1機あたり約101億円 |
「イーグル」の愛称で知られるF-15戦闘機はもともと1976年に米空軍で運用開始された機体で、当時としては圧倒的な高性能を誇りましたが、ゆとりのある設計であったことから近代化改修を繰り返して今も現役で使用されています。F-15は敵戦闘機を撃破して航空優勢を確保するための制空戦闘機であり、初実戦となった1991年の湾岸戦争では撃墜38機、被撃墜ゼロの鮮烈デビューを行いました。同機はその後もアメリカの各軍事作戦に投入され、イスラエルなどの輸出先でも実戦を経験しますが、その優れた空戦性能から公式には撃墜された機体が存在しないという「無敗神話」を誇り、この記録から「世界最強の戦闘機」の異名を獲得しました。
そんな最強の戦闘機を日本は1981年から配備を始め、ライセンス生産によって計213機を調達しましたが、これはアメリカに次ぐ保有数であり、北は千歳から南は那覇に至るまでの全国の空自基地に配備されています。毎日相次ぐ中国軍機やロシア軍機に対するスクランブル発進にフル活用されている空自のF-15Jは戦闘機パイロットを目指す航空学生にとってもよく目にする憧れの機体で、同機を操る者は「イーグル・ドライバー」とも呼ばれます。

ちなみに、空自のF-15Jは1995年の訓練において誤まって発射された空対空ミサイルによって被撃墜が発生したことで世界唯一の撃墜、被撃墜の記録を持っています。撃墜されたF-15Jのパイロットは緊急脱出して幸いにも無事でしたが、これは航空機によって撃墜された唯一のF-15戦闘機となりました。
ベテラン戦闘機はマルチロール機に生まれ変わる?
空自は現在も201機のF-15J戦闘機を保有していますが、このうち半数近い94機は近代化改修によって情報処理能力と電子機器の性能が大幅向上した「J-MSIP機」と呼ばれるものです(Japan Multi-Stage Improvement Program「日本多段階能力向上計画」の略)。一方、近代化改修の対象外となったF-15JはPre-MSIP機と呼ばれ、最新のF-35ステルス戦闘機に順次更新される予定ですが、より老朽化したF-4ファントム戦闘機の更新が始まったばかりなので旧式のF-15Jもしばらくは現役続投となります。
そして、既にアップグレードされた102機のJ-MSIP機のうち、68機に対して電子戦能力の強化やレーダーの更新、長射程ミサイルの搭載が実施されることになり、維持管理費など諸々を含めた約6,500億円をかけて二度目の近代化改修が行われる予定です。特に、長射程ミサイルに関しては台湾有事で中国軍に有効な打撃を与え得るJASSMミサイル、そして国産開発される延伸型の12式対艦ミサイルを搭載するので、従来の制空戦闘機から対地・対艦攻撃も可能なマルチロール機へと生まれ変わります。
かたや世界に目を向けた場合、本家・アメリカでは最新のレーダーや電子戦能力を備え、対地攻撃能力も持つマルチロール型の最新バージョン「F-15EX」が登場し、76機の調達が発表されました。このF-15EXは最新鋭のF-35よりも兵器搭載量や速度で優れ、耐用年数と維持費の点においても有利なことから最新のステルス戦闘機を使うまでもない作戦に投入するオプションとして非常に魅力的です。
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