実証機「X-47A」を発展改良
アメリカは「MQ-9リーパー」ような無人攻撃機を当たり前のように使っていますが、なかには性能的には優れていながら、開発中止になったケースもあります。
そのひとつが空母艦載機として目指していたX-47B無人攻撃機、通称「ペガサス」です。
- 基本性能:X-47B
重 量 | 13t(空荷状態) |
全 長 | 11.63m |
全 幅 | 18.9m |
全 高 | 3.1m |
速 度 | 時速1,100km |
航続距離 | 約3,900 km |
高 度 | 12,800m |
兵 装 | 空対空ミサイル、JDAM爆弾など |
X-47Bはもともと実証実験用の「X-47A」を発展させたものですが、このA型は軍需産業大手「ノースロップ・グラマン社」が2003年に作ったステルス無人機でした。
その後、開発は実証段階から戦闘攻撃機である「B型」へと移り、2011年には初飛行を、2013年には空母での発艦・着艦に成功しています。これは米軍にとって歴史的瞬間といえるもので、X-47Bは良好なステルス性に加えて、遠隔操作を必要としない「完全自律飛行」を達成したわけです。
それまでの無人攻撃機が遠隔操作を必要としていた点を考えると、自ら空母で離着艦したり、状況に応じながら全自動飛行する能力はかなり画期的でした。
こうした強みをもたらしたのが、現在ではおなじみとなった「AI」ですが、ChatGPTが話題になる10年も前に空母での試験運用までこぎつけていた形です。
空戦から対地攻撃まで
では、米海軍はX-47Bをどう使うつもりだったのか?
無人攻撃機である以上、X-47Bは空対空ミサイルなど2,000kg分の兵装を積んで出撃できました。無人機の利点を活かせば、人間が耐えられないような高機動運動も行えるため、有人機相手の空戦では有利に戦えたとされています。
また、戦死者を出さずに済むことから、敵の奥深くまで侵入して基地・拠点を叩いたり、相手の防空システムを引きつける役割に向いていました。
こうした任務を達成すべく、いずれはレーザー兵器や高出力マイクロ波を装備するつもりでしたが、これには弾道ミサイルも迎撃する狙いがあったそうです。
コスト超過で予算打ち切り
X-47Bの試験運用はその後も順調に進み、2015年には空中給油にまで成功しました。
ところが、2016年にはコストを理由に開発中止になります。
当初およそ760億円と見積もられていた開発費は、2012年には970億円にまで達しており、最終的には1,500〜2,000億円になると予想されました。
2015〜2016年頃は米議会が予算を巡って特に対立していた時期でもあり、対中国の重要性は認識しながらも、歳出削減の意向が強かったといえます。そして、米海軍の中でも、X-47Bはコスト面でわりに合わず、そのステルス性も近いうち陳腐化するとの声がありました。
空母に自動着艦した X-47B(出典:アメリカ海軍)
その結果、X-47Bの量産化計画は断念されたものの、その無人技術などは「MQ-25」無人空中給油機へと受け継がれました。
現在は中国に対する優位性を確保すべく、アメリカは新たな無人攻撃機の開発を進めており、ここでもX-47Bのもたらした知見が活用されています。
もし開発がつづいていれば、いまごろはF-35Cとともに最新鋭の空母艦載機として海上を飛んでいたかもしれません。
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