軽戦車?フランスのAMX-10RCとその評価について

フランスの軽戦車 外国関連
この記事は約3分で読めます。

装輪式の偵察戦闘車

ロシア=ウクライナ戦争では、アメリカの武器支援を受けたウクライナが善戦しており、特にロシア戦車を多数撃破したジャベリン対戦車ミサイルや神出鬼没なHIMARS高機動ロケット砲が注目を集めました。

しかし、軍事支援では欧州勢も負けておらず、フランスは他国に先んじて「軽戦車」とも評される装甲戦闘車、「AMX-10RC」を提供しました。

  • 基本性能:AMX-10RC
重 量 17.4t
全 長 9.13m
全 幅 2.95m
全 高 2.6m
乗 員 4名
速 度 時速85km(路上)
時速65km(不整地)
行動距離 約800km
兵 装 105mmライフル砲×1
7.62mm機関銃×1
12.7mm機関銃×1

AMX-10RCはタイヤ式の偵察戦闘車でありながら、対戦車戦も想定した105mmライフル砲を載せているのが特徴です。そのライフル主砲は最大2,200mの射程を持ち、通常の装甲車両はもちろん、戦車に対しても相応のダメージを与えられます。

よって、軽戦車に分類されがちで、存在的には自衛隊の16式機動戦闘車に近いかもしれません。

また、いま使われている車両については、射撃管制システムや光学機器が刷新されており、その性能は初期型と比べて大きく向上しました。

一方、軽量化を優先した代償として、防御力は弱く、アルミ合金製の車体は薄い装甲しかありません。ただし、これも追加装甲やアクティブ防護システム、NBC防護力によってある程度は強化されました。

射撃するAMX-10RC(出典:フランス軍)

さらに、タイヤ式のAMX-10RCは高い路上機動力があるとはいえ、変速機を含む「脚回り」が複雑という欠点を抱えています。

とりわけ初期型は水上航行を目指すべく、ウォータージェット推進を導入したため、機関部が複雑化したり、整備性が悪くなりました。

こうした複雑構造はコストを押し上げる結果になり、調達や輸出面ではあまり成功しませんでした。現在もフランスで約240両が運用されていますが、それ以外ではモロッコとカタール、カメルーンが採用したぐらいです。

主力戦車「ルクレール」と似た理由で輸出がふるわなかったものの、実戦では湾岸戦争やアフガニスタン戦争、マリでの軍事作戦に投入されてきました。

特にフランスは元・宗主国という立場から、アフリカへの軍事介入をしがちですが、こういうときは機動力・打撃力をかね備えたAMX-10RCの出番が多いようです。

実戦で露呈した低い防御力

さて、登場から40年が経過したAMX-10RCは、すでに後継のジャグア装甲偵察戦闘車へと更新されつつあります。

このうち、余剰品の約40両がウクライナに供与されたわけですが、これは西側諸国が戦車を提供するきっかけになり、ウクライナ側が切望していたレオパルト2戦車へとつながりました。

こうしてウクライナ軍に渡されたAMX-10RCは、2023年の夏季反攻作戦で本格投入されました。しかし、その脆弱な装甲は砲弾の破片ですら貫通するなど、最前線での使用にはとても耐えられないと評価されています。

これらが損害が果たして初期型なのか、それとも改修された車両なのかは不明ながら、少なくとも攻勢作戦には向いておらず、あくまで威力偵察用というのが証明された形です。

アメリカのM2ブラッドレー歩兵戦闘車が、被弾しても乗員が全員無事だったのに対して、AMX-10RCは至近弾で死傷者が出るほど防御力が弱く、生存性の違いが浮き彫りになりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました