空輸できる四輪バギー
陸上自衛隊といえば、装甲車などの重装備が多いなか、近年は小型・軽量化の流れを受けて、「汎用軽機動車」が登場しました。
これはカワサキ・モーターズが作り、多目的自動車「ミュール」の自衛隊版ですが、その実態は小型の四輪バギーです。
- 基本性能:汎用軽機動車
| 重 量 | 0.5t |
| 全 長 | 3.45m |
| 全 幅 | 1.61m |
| 全 高 | 1.95m |
| 乗 員 | 5名(前3、後ろ2) |
| 速 度 | 時速72km |
| 価 格 | 約1,300万円 |
まずはミュールを説明すると、「Multi-Use Light Equipment」の略称であって、多目的の軽装備という意味です。海外では農場の移動・運搬作業に役立ち、ゴルフカートのような見た目とはいえ、優れた機動力とともに、全地形対応型で不整地も走行できます。
こうした特徴をふまえて、陸自ではV-22オスプレイに搭載するべく、2018年から試験運用してきました。
オスプレイは「水陸機動団」を運び、離島防衛用の装備のひとつですが、その機内に高機動車などは収まらず、ミュールならばギリギリ入るため、「汎用軽機動車」として導入しました。
小さな力持ちの「ロバ」
汎用軽機動車は5人まで乗れるほか、後ろの座席を折りたためば、最大450キロまで積載可能です。しかも、かわいい見た目に反して、約900キロの車両を引っ張るなど、意外にも「力持ち」といえます。
そもそも、Muleは英語でロバの意味を持ち、小さな体にもかかわらず、自分より大きな貨物を引っ張る、過酷な道を歩く働き者にはふさわしい名です。
そんな「ロバ」を導入するにあたって、自衛隊は以下の変更を行い、市販品にいろいろ手を加えました。
- 陸自車両としてOD色(オリーブドライ)に塗装
- オスプレイ搭載用の固定フックを追加
- ウィンカーやミラーなどを追加(道路運送車両法に基づく)
なお、本来は農場などの私有地で使い、一般道の走行は想定しておらず、そのままでは公道は走れません。
法令基準を満たすためには、上記のような改造に加えて、国土交通省の認可が欠かせず、汎用軽機動車は特別許可に基づいて、必要とする範囲内で公道を走れます。
災害派遣と防御力のなさ
さて、陸自では2018年に最初の6両を買い、能登半島地震(2024年)でも送り込み、持ち前の軽快さを発揮しています。
このとき、主要道路が寸断されていたり、山間部の狭い道しか通れないなか、他の自衛隊車両では難しい場所を進み、孤立地域に先遣隊と物資を届けました。
本来のコンパクトさ、悪路に強い特徴を活かしながら、災害派遣で活躍した結果、現場での評価は上がりました。
能登半島地震でも使用(出典:陸上自衛隊)
一方、汎用軽機動車は防御力がなく、至近弾や爆風で簡単にひっくり返り、その生存性は高くありません。
はっきり言えば、頑丈なゴルフカートでしかなく、外部環境と気候の影響が直に届き、乗る側としては不安が残ります。
もちろん、この欠点は汎用軽機動車に限らず、諸外国の似た車両も同様です。たとえば、米軍は似た車両を戦場に持ち込み、ロシアも「強化ゴルフカート」をウクライナに投入中です。
ただ、ウクライナでは防御力の弱さがひびき、地雷や砲弾で乗員ごと吹き飛び、生存性のなさが露呈しています。
試験運用で終わった?
災害派遣で活躍したとはいえ、本格的に導入する動きは見られず、追加購入する気はありません。
陸自は「調達失敗」として扱い、試験運用中の6両で終わりますが、明確な理由は公表されておらず、代替案も宙に浮いたままです。
試験運用で終わる(出典:陸上自衛隊)
オスプレイに搭載できるものの、先述の防御力の欠如に加えて、最低限の火力すら装備できず、使いにくいと判断されたのでしょう。同種の海外車両を見ると、重機関銃を追加するなど、戦場向けにアレンジしやすく、この点でMULEは微妙だったと思われます。
ちなみに、航空自衛隊も同様の車両を使うも、こちらは基地警備に投入しており、現状の性能で間に合っているようです。


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