最も身近な装甲車として各地に配備中
銃弾や砲弾の破片が飛び交う戦場では歩兵(自衛隊では普通科隊員)を防護する装甲車が必要となり、陸上自衛隊も各種の装甲車両を保有しているなか、最も身近な存在といえるのが「軽装甲機動車」です。これは隊員の移動および防護を目的とした簡易装甲車で、89式装甲戦闘車のように戦闘への積極的参加は前提としていないものの、最前線で隊員を防護するための最低限の機能は持っています。
⚪︎基本性能:軽装甲機動車
全 長 | 4.4m |
全 幅 | 2.0m |
全 高 | 1.85m |
重 量 | 4.5t |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速100km |
航続距離 | 約500km |
兵 装 | なし |
価 格 | 1両あたり約3,000万円 |
小松製作所が開発して、英訳の「ライト・アーマー」や略称の「LAV(ラヴ)」で親しまれている本車はそれまで使っていた車両よりも装甲化されたうえ、比較的軽量で空輸に適しているのが利点です。この優れた空輸性のおかげで海外派遣の際には定番装備として持ち込まれ、イラクやジプチでは追加装甲などの改修を受けた車両が現地の過酷な環境下でも問題なく人員移動やパトロール任務をこなしました。また、離島防衛においても、輸送機やCH-47ヘリによって迅速に展開できる装備のひとつとして期待されています。
武装については車体上部に5.56mm機関銃を据えつけるための器具を設置できるうえ、上部ハッチを開いて身を乗り出した隊員が01式軽対戦車誘導弾などを発射することも可能です。ちなみに、機関銃を用いる場合は銃手を後部座席間に座らせて定員を5名に増やすケースが見られます。
疑問視されている防護力と要改善の快適性
一方、肝心の防護力は施されている装甲と防弾ガラスで小銃弾を防げるものの、それ以上の火器に対する耐性は疑問視されています。もちろん、詳しい防弾性能は機密にあたるので不明ですが、海外派遣時に防弾ガラスの性能を強化している事実から推測すると、基本的には機関銃以上への対応は厳しいと思われます。
ほかにも、重心が低くて横転しやすいことから地雷や即席爆発装置(IED)に対して脆弱という欠点がありますが、本車はあくまで「軽」装甲機動車なので最低限の盾として小銃弾に対する一定の防護力があればよいと割り切る必要もあるかもしれません。

さて、冒頭では軽装甲機動車を最も身近な装甲車と表現しましたが、残念ながら「身近=快適」ではなく、多くの隊員が移動に使う本車は座り心地が悪いうえ、タイヤの振動もひどいため長距離移動には向かないそうです。さらに、車内は意外にも狭く、通常定員の4名が乗ったらそれぞれの個人装備が入りきらないという問題も起きています。ただ、陸自の装甲車として初めてエアコンを標準装備として採用した点は海外派遣部隊を含む隊員たちから高評価を受けています。
このような諸問題を抱えながらも軽装甲機動車は現在までに約2,000両が調達され、量産効果によって単価も1両3,000万円と自衛隊装備品にしては安価になりました。全国各地の陸自部隊、そして基地警備用に導入した一部の空自部隊で見られる軽装甲機動車ですが、後継車については本車を手がけた小松製作所が防衛産業から撤退したこともあって、三菱重工などが提案する海外製品の輸入になりそうです。
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