96式装輪装甲車の後継候補だった
陸上自衛隊が運用している96式装輪装甲車の後継として、新たにフィンランド産のパトリアAMV XPを採用したことが話題になりましたが、当初計画では国産の「装輪装甲車(改)」を後継にするつもりでした。
しかし、防弾性能を満たせない不具合によって開発中止に追い込まれ、「幻の国産装甲車」になってしまいました。
⚪︎基本性能:装輪装甲車(改)
重 量 | 20t |
全 長 | 8.4m |
全 幅 | 2.5m |
全 高 | 2.9m |
乗 員 | 11名(操縦手2名?) |
兵 装 | 機関銃、擲弾銃 |
価 格 | 不明 |
96式装輪装甲車は陸自のイラク派遣にも使われた兵員輸送車ですが、多様化する任務に対応するための改修には限度があり、もっと防御力の高い装甲車が求められました。
そこで、防衛装備庁は96式装輪装甲車を作った小松製作所に再び白羽の矢を立て、2017年には試作車両が納入されました。このとき、既存部品や民生品を活用してコスト削減と期間短縮を図り、開発費用を約50億円に抑えました。
「装輪装甲車(改)」は任務に応じた追加装甲や遠隔操作式の機関銃を設置できるうえ、モジュール式の車体後部はユニットの載せ替えによって、兵員輸送型から指揮通信型や施設支援(工兵)型に変身可能です。
また、20トンほどの車体は空自のC-2輸送機にも問題なく搭載できたため、空輸性にも長けていました。

乗員定数は11名ですが、これは操縦手も含むと思われることから、実際に輸送する兵員数は9名になります。そして、これら乗員を地雷や即席爆弾(IED)から守る目的で車体下部にはV字型構造を採用しました。
このように地雷・IED対策を重視したものの、防御力自体は試験評価で及第点を取れず、2018年に開発が中止されます。
中止の原因は防弾性能の不足で、具体的には防弾板の性能にバラつきがあったとか。本車が96式装輪装甲車よりも高い防御力が求められていた点を考えると、これは致命的でした。
不合格を受けて小松製作所は新しい防弾板を開発したものの、時間短縮とコスト節約を図りたい防衛省側が見切りをつけました。防衛省としては小松製作所では技術力が足りず、費用を増額しても要求を満たせないと判断したようです。
こうして小松製作所の新たな挑戦は不本意な形で終わり、「装輪装甲車(仮)」は試作車両を残して「幻の国産装甲車」となったわけです。
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コメント
「>技術力が足りず」なんて言ってますが、果たして十分な額の研究予算援助をしたていたのかどうか疑問です。国内防衛関連企業を保護せず、安易に海外兵器の導入ばかりを図る事が、果たして日本の防衛力増強に繋がるのでしょうか。もっと国内企業の保護・支援にも力を入れて欲しいもんです。