航空自衛隊がオーストラリアにローテーション展開する理由

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日豪「準同盟」をさらに強化

日米同盟を基軸とする日本にとって、唯一かつ正式な同盟国はアメリカのみです。しかし、近年はオーストラリアとの安全保障関係を深化させた結果、両国はもはや事実上の「準同盟関係」になりました。

もちろん、これは対中国を意識したもので、同じアジア太平洋地域の民主主義国家として互いの利益が合致したからです。

両国間では安全保障問題について協議する閣僚会合、いわゆる「2+2」が定例開催されているほか、共同訓練の定期実施、そして訪問時の手続きを簡略化する円滑化協定も締結されました。

すなわち、オーストラリアはアメリカを除く安全保障上の最重要パートナーになったわけですが、さらなる段階として航空自衛隊をオーストラリアにローテーション展開する方針です。

日豪間での軍用機の往来はすでに行われており、2023年8月にも空自の戦闘機や空中給油機、輸送機が訓練でオーストラリアに機動展開しました。

オーストラリアで歓迎を受ける空自戦闘機(出典:航空自衛隊)

防衛省が次に狙っているのは、こうした航空部隊を一定期間派遣することですが、実態としてはローテーション展開にあたります。これは2022年末に出された日豪2+2の文書でも言及されたもので、向こうの空軍基地に戦闘機を交代派遣しつつ、整備員も現地滞在させる予定です。

もちろん、これは日豪準同盟のさらなる強化をもたらし、両国間の相互運用性を高める効果が期待できます。日豪はともにアメリカの同盟国であり、同じF-35ステルス戦闘機を使っているため、普段から運用・整備面での連携を深めるのは有益でしかありません。

しかも、狭い日本の訓練空域と違って、広大なオーストラリア大陸の空を飛べるわけですから、戦闘機パイロットにとっては嬉しい訓練環境でしょう。また、派遣された隊員の英語力向上も見込めるので、米豪英諸国とのスムーズな連携にもつながります。

派遣の法的根拠は怪しい?

しかし、ローテーションとはいえ、事実上の海外配備になることから「法律の壁」を避けては通れません。防衛省の言い分としては、これはあくまで訓練目的の機動展開であって、訓練関連の法律に基づくとのことですが、いささか無理があるといえます。

このように法的根拠が乏しいと懸念されるなか、もし派遣中にオーストラリアへの攻撃があった場合は、当然ながら集団的自衛権を行使しなければなりません。

したがって、集団的自衛権を想定した現地訓練も行われる予定ですが、条件付きの限定行使からフルスペック行使に向けた「なし崩し的な行為」として議論を呼びそうです(筆者的には「同盟関係」である以上は、相互間の全面行使は当たり前と考えますが)。

聖域確保と敵の計算を狂わす

さて、この空自のローテーション展開にはもうひとつ大きな意義があります。

それは安全圏での戦力温存です。

航空戦力というのは地上基地に依存しているうえ、戦争では真っ先に狙われやすく、初戦での全滅を避けなければなりません。

例えば、ロシア=ウクライナ戦争ではウクライナ空軍が空中退避できたのが功を奏し、未だに航空戦力を維持してロシアの航空優勢確保を阻止しています。

むろん、空自も空中退避の重要性を心得ていますが、有事が起きてから急いで退避するのと、平時から射程圏外に展開させておくのでは「効果」が違います。

相手からすれば、6,000km以上も離れたところにいる空自部隊も想定に入れねばならず、航空撃滅戦を狙った計画を余計複雑にさせます。

このように日本は一種の「聖域」を確保できる一方、中国側の計算をある程度は狂わせられるのです。

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