まだ通用する?87式対戦車誘導弾

ミサイル
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国産初のレーザー誘導式「中MAT」

陸上自衛隊は戦車を撃破するための装備を多数運用しており、和製ジャベリンこと01式軽対戦車誘導弾や110mm個人携帯対戦車弾と呼ばれるパンツァーファウスト3などが有名ですが、これらは肩に担いで撃つタイプの対戦車火器になります。これに対して、三脚などに発射機を設置して遠距離から攻撃する装備も存在します。その一つで87式対戦車誘導弾であり、国産で初めてレーザーによる誘導方式を採用したことでも知られています。

⚪︎基本性能:87式対戦車誘導弾

重 量12kg(装備一式は140kg)
全 長1.06m
直 径110mm
速 度毎秒250m
射 程2,000m以上
価 格1発あたり約1,000万円?

「中MAT」「87ATM」の通称を持つ87式対戦車誘導弾は全国各地の普通科連隊に配備されている対戦車火器であり、ほぼ同じ役割を担う79式対舟艇対戦車誘導弾よりも小型かつ軽量なのが特徴です。中MATはミサイル本体を収めた発射機と照準用のレーザー照射器、暗視装置で構成されており、これらを三脚にまとめて設置して撃つことができます。一応、隊員が発射筒を肩に担いで撃つことも可能ですが、基本的には三脚に設置して発射するのがスタンダードのようです。

前述のように中MATは国産兵器として初めてレーザー誘導方式を採用しましたが、これは目標に対してレーザーを照射することで反射光をミサイルが捉えて向かう仕組みです。そのため、79式対舟艇対戦車誘導弾のように誘導用の有線ワイヤーが不要となり、飛翔速度が毎秒250m以上に向上しています。ただ、レーザーを照射した際に探知されたり、煙幕を展開されると狙えなくなるという弱点も存在します。

発射される中MAT(出典:陸上自衛隊)

操作には射手、照準手、弾薬手の3名が必要ですが、照準手に関しては目標に命中するまでレーザーを照射し続けることが求められます。そのため、発射時に位置が露呈することを想定して、中MATは200メートル以内であれば発射機とレーザー照射器を離して設置することを可能にしており、照準手を含む隊員の安全を確保しているのです。

また、ミサイル6発を含む装備一式の総重量は140kgであり、通常は展開場所の付近までトラックで輸送しますが、各装置は分担して人力でも運べるので険しい地形での展開も可能です。このように中MATは車両が入れない山中などでも隊員が最終的に担いで運ぶことで設置できるため、敵を待ち構える地点の選択肢が広く、待ち伏せ攻撃には最適の兵器と言えます。

中MATを背負って歩く隊員(出典:陸上自衛隊)

中MATは暗視装置も付いていることから夜間攻撃にも対応しており、有効射程は2,000mと言われているものの、実際は4km近くあるのではないかと推測します。肝心の威力についてですが、カタログスペック上はパンツァーファウスト3に劣らないとも言われていますが、最新の戦車を完全撃破できるかは微妙でしょう。それでも、側面などを狙えば撃破できる可能性は十分にあり、有利な待ち伏せ攻撃で駆使すれば対戦車兵器として今でも通用するでしょう。

さて、そんな中MATは全国の普通科連隊における対戦車小隊に配備されており、割と普及が進んでいる国産兵器の一つです。2006年に新規調達が終わるまで300セット近くが生産されましたが、それでも全ての普通科連隊には行き届いておらず、後継として高機動車に発射機を搭載する中距離多目的誘導弾が登場しました。とはいえ、中距離多目的誘導弾の調達も徐々に進められているものなので、中MATもまだしばらくは姿を消さずにいるでしょう。

⚪︎関連記事:二刀流の79式対舟艇対戦車誘導弾

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