ATACMSの後継として
アメリカの「HIMARS」高機動ロケット砲がロシア=ウクライナ戦争で活躍するなか、約70kmの射程を持つ通常弾のほかにも、最大300kmまで到達可能な短距離弾道弾「ATACMS」も注目されました。
しかし、 ATACMSはコスト超過で生産中止になり、いまは在庫品を改良・使用していることから、その後継として次世代地対地ミサイルの「PrSM」が開発されました。
- 基本性能:PrSM地対地ミサイル
重 量 | 約800kg |
全 長 | 約4m |
直 径 | 不明 |
速 度 | マッハ3以上 |
射 程 | 最大500km |
価 格 | 不明 |
PrSMは「Precision Strike Missile(精密打撃ミサイル)」の略称になり、ATACMSと同じくHIMARS、MLRS(多連装ロケットシステム)から発射される兵器です。
開発当初は中距離核戦力全廃条約(INF条約)が有効だったため、アメリカは射程500〜1,500kmのミサイルを保有できませんでした。そこで、PrSMの射程をギリギリ抵触しない499kmに抑えました。
その後、2019年にINF条約が失効すると、500〜1,500km間の精密打撃力を埋めるべく、米陸軍は射程を500km以上まで伸ばします。
小型化・軽量化に成功したおかげで、HIMARSでは2発、MLRSならば最大4発まで搭載できるほか、共通のソフトウェアを使ってATACMSからそのまま移行しやすくしました。
また、射撃試験では遠距離攻撃のみならず、発射直後の軌道修正が求められる近距離攻撃にも成功しており、高い命中精度と柔軟性を証明しています。
対中国戦に向けた配備
事実上の短距離弾道ミサイルとして配備されるなか、現在は米陸軍以外にも米海兵隊、そしてオーストラリア軍への納入も決まりました。
配備自体は2023年に始まったものの、初期バージョンは飛行場や補給拠点など、あくまで地上の固定目標しか攻撃できず、さらなる改修で地上・海上の移動目標に対する攻撃能力が与えられる予定です。
射程距離も最大1,000kmまで延伸するつもりですが、これは西太平洋での対中国戦を想定した動きで、アメリカ西海岸から太平洋に向けて発射する試験も行われています。
アメリカは島嶼戦での機動展開と生存性向上を図るべく、新しい高機動兵器を続々と登場させており、PrSMも中国軍を撃破する長距離打撃力として期待されています。
コメント