自衛隊が誇る「和製ジャベリン」
携行式対戦車ミサイルの登場によって歩兵は戦車を撃破できる火力を入手しましたが、その効果はロシア=ウクライナ戦争でジャベリン・ミサイルなどによってロシア戦車が多数撃破されたことで再び注目を集めました。
こうしたなか、「和製ジャベリン」と称される陸上自衛隊の対戦車ミサイル「01式軽対戦車誘導弾」も改めて注目されています。
⚪︎基本性能:01式軽対戦車誘導弾(LMAT)
重 量 | ミサイル本体:11.4kg システム全体:17.5kg |
全 長 | 0.97m |
直 径 | 140mm |
速 度 | 毎分4km |
射 程 | 1,000m以上 |
弾 頭 | 成型炸薬弾 |
価 格 | 1セット約2,600万円 1発あたり約2,000万円? |
通称「LMAT」と呼ばれる01式軽対戦車誘導弾は、84式無反動砲の後継として2001年に採用された個人携行型対戦車ミサイルです。
同時期に登場したアメリカのジャベリンと外見が似ているうえ、同じ赤外線画像による自律誘導機能を持つなど、性能や運用面での共通点が多く見られます。
LMATはジャベリンと同様にロックオン時に入力した情報に基づいて飛翔しつつ、赤外線誘導を用いて自ら追尾する「撃ちっ放し能力」を持ち、後方への爆炎(バックブラスト)も抑えられてるため、軽装甲機動車のハッチを開けて撃てます。
攻撃方法には通常モードのほかに、高く飛翔した後に上から突っ込む「トップ・アタック」がありますが、これは脆弱な戦車上部を狙って確実に撃破するためのモードです。
さらに、ミサイル弾頭は成形炸薬が二重配置されているので、敵戦車の爆発反応装甲を無効化したうえで後発の炸薬でダメージを与える効果を発揮します。
このように「和製ジャベリン」は本家に引けを取らない性能を誇るものの、気になる射程距離については公表されておらず、あくまで演習時の様子から推測するしかありません。
ただ、ジャベリンと同じコンセプトである点を考えると、最大射程も同等の2,500mは確保されていると思われます。
ジャベリンとの違いは重量と対応目標
では、LMATはジャベリンと何が違うのか?
まず、LMATの総重量はジャベリンの22.3kgよりも軽い17.5kgとなっていて、欧米人と比べて体格の小さい日本人向けになりました。
しかし、ジャベリンと違ってLMATは1名で運用するので、予備弾も含めたら結局30kg以上を単独で担ぐことになります。
また、ジャベリンは目標にロックオンする際、赤外線装置を2〜3分ほど冷却せねばならないのに対して、LMATは対戦車ミサイルとして初めて非冷却型の赤外線装置を搭載したことでジャベリンよりも素早い発射が可能です。
一方、LMATのシステム起動には熱感知が必要なことからジャベリンのように建物や陣地などには使えず、これを「欠陥」と捉える向きもあります。
車両以外の目標も狙えるジャベリンの方が汎用性に優れているものの、対戦車ミサイルとしての役割に限れば、LMATは「戦車キラー」として十分な威力を持っているので、わざわざ類似兵器のジャベリンを導入する必要はありません。
大まかにまとめると、LMATとジャベリンの共通点、そして相違点は以下のようになります。
共通点 | 相違点 |
・撃ちっ放し能力 ・後方爆炎の抑制 ・通常モードとトップアタックの選択 ・成形炸薬弾頭の二重配置 |
・総重量:LMATの方が軽い ・操作人数:LMATは1名、ジャベリンは2名 ・対応目標:LMATは車両のみ ・赤外線装置:LMATは非冷却型 |
既に1,100セット近いLMAT(弾数とは別)陸自に配備されていますが、ロシア=ウクライナ戦争で改めて対戦車ミサイルの有効性が証明されたことをふまえて、増産もしくは改良に注力する見通しです。
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