空からの対地攻撃を担う老兵
陸上自衛隊には攻撃ヘリ部隊がありますが、数の上で主力を成しているんが「AH-1S コブラ」と呼ばれる機体です。これは、元々アメリカが1960年代に開発した世界初の攻撃ヘリであり、ベトナム戦争からイラク戦争まで実戦投入された実績を持ちます。米陸軍の機体は既に全数退役済みですが、海兵隊では改良型を未だに使っています。一方、陸自では1980年代から本格的に調達され、最終的に90機が導入されました。
⚪︎基本性能:AH-1S コブラ
全 長 | 17.44m |
全 幅 | 3.28m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 最高時速315km |
航続距離 | 456km |
兵 装 | 20mmバルカン砲×1 対戦車ミサイル×8 ロケット弾×38 |
価 格 | 1機あたり約25〜50億円 |
AH-1Sは正面から見ると非常にスリムな形状をしていますが、これは発見されにくくするためのデザインです。ただ、細い機体でありながら大きな攻撃力を持っているため、敵戦車部隊にとってはかなりの脅威になり得ます。
機首の下部にある20mmバルカン砲は一帯を制圧する射撃に効果的であり、非装甲車両ならば容易に撃破できます。また、対戦車ミサイルを最大8発、ロケット弾19発を納めたポッドを2つ装備しているため、敵陣地や車両部隊に対して短期間で大きなダメージを与えられます。幸い、陸自のAH-1Sは実戦を経験することなく今日まで至っていますが、「戦国自衛隊」のようなメディアでは猛威を振るっている姿が見られます。

コブラは古い機体ではあるものの、改修を施すことで夜間作戦能力の向上や燃料搭載量の増大を実現してきました。最終的に90機導入された本機ですが、事故や老朽化によって現時点で運用されているのは52機です。また、当初から1機あたり約25億円(米軍の3倍)とコストが高く、少数生産という自衛隊特有の事情も加わることで生産後期には50億円という単価になってしまいました。
そして、2000年代後半にはコブラの退役を見据えた後継機の選定が行われ、AH-64Dアパッチ・ロングボウを導入して置き換えることが決まります。しかし、高騰するコストと部品調達の不安によってAH-64Dの調達はわずか13機で終わりました。この調達失敗にAH-1Sが主力として予想外の現役続投となりましたが、対中国を見据えた大規模な組織改編を進める防衛省は攻撃型無人機を導入することで全ての攻撃ヘリを廃止していく方針を打ち出しました。つまり、陸自における攻撃ヘリ部隊が消えて約1,000名の人員を浮かすわけですが、後継の無人機は具体的に示されておらず、MQ-9リーパーなどの候補が考えられます。
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