ロシアのパーンツィリ防空システムの性能と価格について

パンツィーリ防空システム ロシア
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ミサイルと機関砲の合体

ロシア軍は「S-400シリーズ」などを使い、中・長距離の防空にあてながら、近距離の防空網を補完するべく、「パーンツィリ」を運用してきました。

  • 基本性能:パーンツィリS-1
兵 装 30mm連装機関砲×2
防空ミサイル×12
射 程 機関砲:4km
ミサイル:18〜20km
高 度 機関砲:2,000〜3,000m
ミサイル:15,000m
捜索範囲 35km
同時交戦数 3〜4個
要 員 3名
価 格 20億円以上

パーンツィリとはロシア語で「鎧(よろい)」、あるいは「甲冑」の意味を持ち、主に低空・近距離の脅威に対処します。

簡単に説明すると、短距離防空ミサイルとともに、対空機関砲をひとつの車両に積み、これらを統合した防空システムです。

ミサイルは機関砲に比べて、射程・速度・精度で上回るものの、近すぎる目標には対処できず、いわゆる「間合い」を詰められると、もうどうしようもありません。

また、安いロケット弾やドローンなど、相手次第では費用対効果が悪く、非対称戦には向いていません。

一方、機関砲は遠くまでは届かず、命中精度でも劣るとはいえ、近距離で濃密な弾幕を張り、コスト的にも比較的安価です。

だからこそ、ミサイルと機関砲を組み合わせれば、それぞれの長所で互いの短所を補い、途切れのない迎撃網を構築できます。

そんな防空システムを実現するべく、1990年代にパーンツィリの開発が始まり、2008年にようやく正式採用されました。

高い同時交戦能力と機動力

システムを具体的に見ると、30mmの連装機関砲を2基、合計4門を搭載しており、毎分5,000発の射撃速度、最大4kmの射程を確保しました。

他方、防空ミサイルには「57E6」を選び、左右の発射管にそれぞれ6発、合計12発も搭載しました。

このミサイルは最大20km先まで届き、その迎撃成功率は約70〜90%とされています。ただ、実際の対空戦闘をふり返ると、ひとつの目標に対して2発を放ち、確実な撃墜を試みてきました。

パンツィーリ防空システムミサイル発射の様子(出典:ロシア国防省)

車体後部には捜索レーダーを、前方には追尾用のレーダーを積み、前者で周辺を警戒しながら、後者で目標にロックオンします。

このとき、周囲35kmのエリアを警戒できるほか、わずか2〜3cm²の目標さえ見つけるそうです。そして、最大20個の目標を捕捉したあと、同時に3つと交戦できるものの、バックアップ用に光学追尾装置を持ち、敵の電波妨害にも備えました。

これらをひとつの車両にまとめたため、コンパクトな防空システムになり、高い機動展開性を獲得しました。ただし、実際は指揮統制用の車両、整備用のトラック、弾薬運搬車など、複数の支援車両と一緒に動き、現場でひとつのチームを組みます。

ファミリー化と輸出

なお、その種類はひとつにとどまらず、いろんな改良・派生型が誕生しています。

初期型は「パーンツィリS-1」と呼び、改良型の「S-1M」「S-2」になると、新型レーダーで最大40個の目標を捕捉、同時交戦数も4つに増えます。ミサイルも新型に変えたところ、到達高度と速度で従来型を上回り、射程は40kmに倍増しました。

ほかにも、北極仕様の「SA型」、艦艇搭載型の「M/EM型」など、環境に合わせて改造されており、ファミリー化に成功しています。

その結果、パーンツィリは運用柔軟性が高く、これまで200両以上が生産されたほか、ロシア以外にもアラブ首長国連邦、シリア、アルジェリアを含む、8カ国以上が導入してきました。

実戦で判明した限界

実戦経験でいえば、シリア内戦で西側の空爆を防ぎ、一定の戦果があげたとはいえ、迎撃の失敗で数両を喪失しました。

その後、ウクライナ侵攻で40両近くを失い、「HIMARS」の攻撃を受けたり、自爆ドローンが突っ込み、炎上する姿が確認されています。加えて、同士討ちも発生しており、その識別能力が疑問視されました。

パンツィーリ防空システム機関砲の射撃(出典:ロシア国防省)

本来、ドローンを機関砲で迎え撃ち、コスパよく撃墜できるはずが、ドローン技術の向上により、思うように対処できていません。

いくらパーンツィリであっても、大量の自爆ドローンが飛来すれば、迎撃能力が飽和してしまい、その防空網を崩されてきました。

ただ、これはパーンツィリに限らず、全ての防空兵器に通ずる問題です。それでも、100万円足らずのドローンに対して、数億円のミサイルを放てば、それは単なる浪費にすぎません。

こうした「コストの罠」が存在する以上、パーンツィリの経済性は変わらず、対ドローン戦でのひとつの解です。

本来の役目をふり返る

他方、ロシアはウクライナでの教訓をふまえて、再びパーンツィリの改良に取り組み、2025年には「SMD-E型」を登場させました。ここでは機関砲を廃止した代わり、48発の小型ミサイルを積み込み、一度に対処できる数を増やした形です。

それは対ドローン戦において、ロシアが出したひとつの回答ですが、機関砲の役目が終わったわけではなく、あくまで派生型の一種にすぎません。

補完的な役割は変わらない

むしろ、派生型をかけ合わせれば、互いの欠点を補完できるため、防空網に厚みをもたらします。そもそも、パーンツィリの役割を考えると、それはS-400との連携で多層的防空網を築き、中・長距離と短距離のギャップを埋めながら、局所的な拠点防空を担うこと。

S-400などが長距離防空を行う以上、それは高価値目標になってしまい、別の防空兵器で守らねばなりません。S-400自身は近距離、低空の脅威には比較的弱く、そこでパーンツィリを配備すれば、大型犬を守る小型の番犬になれます。

この関係性はパーンツィリ同士も変わらず、通常型が本来の任務を果たすとき、派生型でドローンから守ったり、逆もまた同様でしょう。

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