イージス艦が放つ「矢」
日本で「イージス艦」と聞けば、弾道ミサイル迎撃の印象が強く、実際にミサイル防衛の中核です。しかし、本来は艦隊を飽和攻撃から守り、いわゆるエリア・ディフェンス役でした。
この艦隊防空を務めるとき、イージス・システムの「矢」として放ち、対艦ミサイルが撃墜するのが、SM-2(スタンダード・ミサイル2)です。
- 基本性能:SM-2ミサイル
| 重 量 | 約700kg |
| 全 長 | 4.72m |
| 直 径 | 0.35m |
| 速 度 | マッハ3.5(時速4,290km) |
| 射 程 | 150〜170km |
| 高 度 | 25,000m |
| 弾 頭 | 60kg(破片拡散型) |
| 価 格 | 約3〜4億円 |
まず、SM-2は艦対空ミサイルにあたり、イージス・システムに合わせて、SM-1を発展改良させたものです。
「スタンダード(標準)」の名前のとおり、SMシリーズは西側諸国の基準になるべく、1960年代にアメリカが開発しました。その後、1970年代にソ連が飽和攻撃戦術を目指すと、アメリカはイージス・システムに取り組み、その主力兵器としてSM-2をつくります。
すなわち、SM-2は中・長距離防空の要として、大量の対艦ミサイルを迎え撃ち、艦隊全体を守るための兵器です。当然、イージス・システムとの相性がよく、むしろイージス艦とはセットでした。
イージス艦からの発射(出典:米海軍)
前任のSM-1と比較すると、複数への同時処理能力を持ち、誘導時の自律性を確保しました。
SM-1は発射から目標の撃破まで、照準装置で照射・追尾せねばならず、母艦の照準装置が2つならば、それが同時交戦数の限界でした。照準装置は「イルミネーター」と言い、その数で防空能力が決まります。
一方、SM-2は途中までデータリンクを使い、情報と飛行経路を更新できるため、イルミネーターは最後だけ必要です。そうなると、イルミネーターが1基でも、2つ以上の目標を迎撃できるため、一度に交戦できる数が増えました。
当時は革命的な進歩であって、SM-2の性能があるからこそ、イージス艦は同時に8〜12個の目標をたたき、飽和攻撃への対処能力が飛躍しました。
もう少し誘導方式を説明すると、あらかじめ入力した情報に基づいて、自身の計器装置(慣性航法)で飛び、目標の予測位置に向かいます。
このとき、データリンクで情報更新を行い、必要に応じて軌道修正します。そして、最後は母艦のイルミネーターで捕捉後、爆発時の破片で撃墜する仕組みです。
改良で性能向上
「タイコンデロガ級」の就役に合わせて、SM-2は1981年から配備が始まり、1988年のイラン攻撃作戦において、SM-1と一緒に投入されました。
ただ、この時はイージス艦が勘違いした結果、イラン航空の民間機にSM-2を放ち、最悪の撃墜事件を起こします。これはシステムの表示エラー、乗組員の確認不足、極度の緊張状態など、複合的な要因が重なり、発生してしまった誤射事件でした。
その後、SM-2は継続的に改良されていき、ブロック1〜3Aに発展するにつれて、射程の延伸と識別能力の向上、低空目標への対応を行い、進化する脅威に対処しました。
ブロック3Bになると、電波妨害への耐性を考えて、赤外線誘導機能が加わり、もっと確実な撃墜を目指します。最新型はブロック3Cですが、新しい制御機能で細かく調整できるほか、自身がレーダー波を出しながら、一定の自律誘導能力を獲得しました。
SM-2の発射(出典:海上自衛隊)
ちなみに、日本のイージス艦はブロック3Bを積み、艦隊防空能力を維持しています。近年の海上自衛隊をふり返ると、イージス艦はミサイル防衛に力を注ぎ、艦隊防空は「あきづき型」が補完するとはいえ、SM-2の重要性は変わりません。
他の護衛艦はSM-2を使っておらず、弾道ミサイルに対処する場合、上位のSM-3で迎撃するものの、相手が航空機や巡航ミサイルならば、SM-2の出番になるからです。
変わらぬ重要性・信頼性
そんなSM-2はフーシ派(イエメン)との戦い、2026年の対イラン戦争において、再び中東近海で真価を試されました。
フーシ派から対艦弾道ミサイル、イランから対艦ミサイル、ドローンが飛来するなか、米海軍のイージス艦が次々とSM-2を撃ち、その大半を撃墜してきました。
連続的な攻撃にもかかわらず、米海軍は損害を出すことなく、卓越した防空能力を改めて証明します。この激しい戦闘を通して、SM-2は多くの教訓を得ており、アルゴリズムの更新に反映されました。
一部のSM-2は外れたとはいえ、その後はESSMミサイル、SeaRAM、20mm CIWSなど、重層的な防空網がきちんと働き、最終的な突破は許していません。
すなわち、最新の実戦経験をふまえても、いまだSM-2は現代戦に通用するほか、多層防空網の先鋒として有効です。
SM-2の発射(出典:米海軍)
他方、SM-6ミサイルを開発したところ、米海軍は次の艦対空ミサイルに選び、量産と配備が進められています。これはSM-2の技術的遺産を引き継ぎ、自律誘導機能を進化させたものですが、長い射程と対艦攻撃能力を持ち、SM-2の正統な後継者になりました。
それでも、SM-6の数が限られている以上、SM-2の生産と運用は続くでしょう。累計生産数は12,000発におよび、確立された信頼性に加えて、多くの同盟国が運用しているため、今後も生産ラインは稼働予定です。


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