本土侵攻リスクの低下
安全保障環境の激変を受けて、自衛隊全体では組織改編が進み、海上自衛隊では以前解説したとおり、水上戦隊などに艦隊を再編しました。
陸上自衛隊も負けておらず、創設以来の大規模再編を行い、新たな防衛戦略に適応させました。改革は半数の師団・旅団におよび、まさに変革期を迎えています。
まず、陸自の歴史をふり返ると、冷戦期はソ連の北海道侵攻に加えて、本土への着上陸侵攻を念頭に置き、北方偏重の配置だったとはいえ、全国に師団・旅団を配備しました。
これは「基盤的防衛力」と呼び、各地の部隊が担当地域を守り、増援まで持ちこたえる体制でした。
ところが、冷戦崩壊でソ連の脅威がなくなり、ロシアもウクライナ侵攻で消耗が激しく、北海道侵攻の可能性は消えました。
ロシア以外の周辺国についても、日本本土に攻め入るだけの能力、特に揚陸・補給能力が見当たらず、本土侵攻のリスクは皆無に近いです。
最も軍事力が高い中国でさえ、台湾島に侵攻できるか分からず、日本本土はなおさら無理です。その代わり、離島防衛の課題が浮かび、ここ15年は「南西シフト」を急ぎました。
現在の陸自からすれば、もはや大規模な本土侵攻はあり得ず、こうした認識に基づいて、先述の思い切った組織改編に取り組み、旧来の基盤的防衛力ではなく、「統合機動防衛力」を目指しました。
即応機動連隊への再編
この統合機動防衛力において、日本版海兵隊の水陸機動団、第1空挺団は中核戦力にあたり、沖縄駐屯の第15旅団と連携しながら、離島防衛の主力を務めます。
しかし、これだけでは機動戦力が足りず、全国に15個ある師団・旅団のうち、7個を機動運用に指定しました。これは他地域(南西方面)に向かい、緊急増援になる部隊ですが、約半数の師団・旅団を刷新するなど、まさに創設以来の大変革です。
出典:防衛省
この機動運用にともなって、鈍重な戦車大隊や特科連隊はなくなり、高機動な新兵器で更新しました。傘下の普通科連隊も変わり、それまでは3個編成だったところ、1個は即応機動連隊に再編しました。
これは従来の普通科連隊と違って、機動力の高い即応戦力として動き、空輸前提の編成・装備になります。
細かい編成は部隊で異なるものの、全体人数は約800名とされており、連隊本部と本部管理中隊を除くと、3個普通科中隊が中軸です。ここに火力支援中隊、機動戦闘中隊が加わり、全体のバランスを整えました。
出典:防衛省
C-2輸送機での空輸を考えて、普通科中隊は各種の装甲車、火力支援中隊は重迫撃砲(120mm)、機動戦闘中隊は16式機動戦闘車を使い、重装備と火力は限定的といえます。
ただ、本部管理中隊は補給と通信、衛生機能を担い、少数の対戦車・対空ミサイルもあるため、自律的な戦闘団に近づけました。
いざ南西有事が起きた場合、軽装の先遣隊をヘリで運んだあと、連隊主力は輸送機、あるいは輸送船で運ぶ構想です。
地域配備部隊で穴埋め
この即応展開部隊こそ、各師団・旅団の抽出戦力にあたり、前述の機動戦力の不足を補います。この抽出戦力を投入すれば、離島防衛戦力を増強できるほか、予備戦力を確保できる算段です。
ちなみに、沖縄の第15旅団は機動運用ではなく、地域配備型のままですが、そもそも沖縄が想定戦域であって、事実上の最前線部隊になります。
他方、即応機動連隊を抽出すると、本来の担当地域が手薄になるため、残りの普通科連隊で穴埋めします。戦時では後方を撹乱するべく、ゲリラなどが潜入する可能性が高く、特に人口密集地帯は要警戒です。
即応機動連隊が抜けた分、残る連隊で敵の後方撹乱を防ぎ、それでも戦力が足りなければ、機動運用されない師団・旅団、いわゆる地域配備型の部隊に頼み、緊急支援に来てもらいます。
C-2で運べる16式(出典:航空自衛隊)
なお、第7師団は唯一の機甲師団である以上、引き続き北海道を防衛するものの、南西有事での機動運用も想定しており、その打撃力を活用したい意向です。
特に九州の陸自部隊を見ると、装甲戦力と打撃力が足りておらず、訓練では北海道から重装備を運び、補完する構えを示してきました。それゆえ、有事でも九州に展開しながら、機を見て南西諸島に送り込み、有効な反撃力として使う見込みです。
以上をまとめると、陸自は本土侵攻リスクの激減、離島防衛の必要性を受けて、地域配備型の編成を改めました。その結果、普通科連隊の改編に取り組み、南西への機動展開兵力として、7個即応機動連隊を用意しました。
この7個連隊は第7師団とともに、南西諸島の離島防衛にも加わり、水陸機動団、第1空挺団、現地の第15旅団と連携する形です。


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