空自最強の飛行教導群:アグレッサー部隊

航空自衛隊

化け物級パイロットが揃う精鋭部隊

航空自衛隊の花形部隊といえば戦闘機部隊ですが、その中で最強と称されるのが石川県の小松基地にある「飛行教導群」です。通称「アグレッサー」と呼ばれるこの部隊は、他の戦闘機部隊への指導を行ったり、訓練で敵役を務めたりします。

そもそも、戦闘機パイロットは操縦者の中でも特に優秀な技量と判断力を有する者のみがなれる存在。その戦闘機パイロットに対して「指導」を行う資格を得るには、余程の飛行技量がないと無理です。

アグレッサー部隊の名物:派手な塗装の機体(出典:航空自衛隊)

また、訓練はパイロットの実力を発揮・向上させる場であるため、敵役は当然「強い」ことが求められます。弱い敵役が相手ではせっかくの訓練の意味がなく、強い相手を倒してこそ自己の成長につながるわけですから。したがって、相当の手練れじゃないとこの敵役は務まらないのです。

この指導を兼ねた訓練は1回あたり約2週間であり、アグレッサー部隊が全国の各部隊に出張する形で行われます。また、他の部隊から飛行教導群に研修で来るパターンもありますが、どちらにせよ指導を受けれるのはかなり貴重な機会です。

訓練は、戦闘機同士の交戦(ドッグファイト)を中心に実施されるため、飛行技量の差が歴然と現れます。日々スクランブル任務に就く現場パイロットたちはそれなりの自信を持って訓練に挑むわけですが、ほとんどが技量の差に度肝を抜かれるそうです。最前線で活躍するパイロットですら唸るその飛行技術は、まさに「化け物級」なのです。

敵役を演じるための技量+頭脳

まず、「アグレッサー」という言葉は英語のAggressor(攻撃者、侵略者)から来ています。敵役を演じたり、指導を行うアグレッサー部隊は自衛隊のみならず、アメリカなどの各国空軍にも存在します。同じ空軍といえども、戦術思想や運用方法はそれぞれで異なっており、敵を撃破するためには相手を知ることから始めねばなりません。

しかし、各戦闘機部隊が各々で仮想敵国の戦術を研究したら非効率なので、それを専門に行って各部隊に伝授、指導するのがアグレッサー部隊の役割です。そのため、アグレッサー部隊はズバ抜けた飛行技量に加えて、仮想敵国の戦術を研究・分析、そして実演する能力も必須です。慣れ親しんだ自国の戦術ではなく、全く異なる外国の戦術思想を理解、吸収するのはかなり大変でしょう。

さらに、飛行教導群は指導する側であるため、隊員たちはいわば「教官」という立場なのです。そのため、研究した敵国の戦術を実演するだけではなく、その特徴や対応方法を論理的に指導せねばならず、「頭脳」が求めれます。ある意味、スポーツ選手に対するコーチのような役割ともいえます。

厳しいパイロットと個性的な機体

飛行教導群はもともと九州の築城基地、新田原基地にありましたが、2016年に石川県の小松基地に移動しました。これは、小松基地の北方の日本海に「G空域」と呼ばれる広大な訓練空域があり、訓練を実施する上で都合が良いからです。ただし、小松基地は天候が不安定なのが難点ですが。

アグレッサー部隊には、20〜30人ほどのパイロットが所属しており、空自の主力であるF-15J戦闘機が配備されています。ここに属するパイロットたちは頭脳明晰、選りすぐりの者たちなので当然プライドもあります。加えて、指導を行う立場としての厳しさも持ち合わせています。例えば、隊員が着るフライトスーツには「撃墜=死」という意味が込められた髑髏のパッチが付けられており、勝利して生還するための技量を厳しく教える姿勢を表しています。

そのため、訓練後の反省会(デブリーフィング)では怒声が飛び交うことも日常茶飯事であり、一般人から見れば「ブラック」な印象も持つでしょう。しかし、常に死と隣り合わせであることを意識するがゆえに、一切の妥協は許されず、厳しい雰囲気にもなるわけです。

アグレッサー部隊に所属する派手な塗装のF-15J(出典:航空自衛隊)

さて、機体の方は他部隊と同じF-15戦闘機でも、飛行教導群のは派手な塗装がなされており、各機とも異なるデザインを施しています。これは、あえて「敵」だとすぐに分からせるための識別塗装であり、「海と空に同化して敵機を認識できなかった」という言い訳を不可能にします。つまり、明確に認識させた上で確実に対処させるための派手な塗装なのです。ちなみに、これら個性的なデザインも各機に乗り込むパイロットたちが選んだものです。

では、アグレッサー部隊に入るにはどうしたらいいのか?

まずは、空自の戦闘機パイロットであることが前提条件ですが(これだけでも相当なハードル)、残念ながら自分から希望して入れる部隊ではありません。訓練で巡ってくる飛行教導群のパイロットたちの目に留まり、打診される形で異動できるようです。つまり、ヘッドハンティングのようなシステムであり、アグレッサーの印象に残るような操縦技量を発揮することが条件と言えます。

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