あまりの欠陥不良品?62式機関銃の悪すぎる評価とは

62式機関銃 陸上自衛隊
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戦後初の国産機関銃

陸上自衛隊は現場での火力支援用に5.56mm機関銃の「MINIMI(ミニミ)」を配備していますが、それまでは約40年間にわたって国産の「62式7.62mm機関銃」を使ってきました。

これは戦後初の国産機関銃でありながら、そのあまりの欠陥ぶりから「ロクニいうこと機関銃」「ない方がマシンガン」とまで酷評されました。

隊員からは不評しかなかったこの機関銃は一体どのようなシロモノだったのか。

  • 基本性能:62式7.62mm機関銃
重 量 10.7kg
全 長 1.2m
口 径 7.62mm
装 填 ベルト給弾式
発射速度 約650発/分(最大)
有効射程 約800m
価 格 約200万円(当時)

62式機関銃は米軍のお下がりから脱却すべく、現在の住友重機械工業が開発したものですが、その見た目は旧日本軍の軽機関銃から影響を受けているのがうかがえます。

同時期に開発された64式小銃と同じく日本人の体格に合わせており、使用弾薬も補給効率を考えて共通化されました。そのため、減衰弾を使うことが可能であり、射撃反動を抑える効果が期待されました。

二脚と三脚のどちらも着けられるほか、照準スコープを取り付けての遠距離射撃もできます。

表面だけを見れば、62式機関銃は軽量化とともに、高い連続射撃能力を目指した国産銃でした。ところが、実際に配備されると現場からは「最悪」との声が続出します。

軽量化がもたらす代償

では、なぜこの機関銃は失敗に終わったのか?

まず、日本人の体格に合わせて軽量化したところ、機関銃でありながら64式小銃よりも銃身が薄くなってしまいました。銃身が細ければ、当然ながら耐久性も低くなり、加熱・膨張しやすい連続射撃には不向きです。

この問題を解決すべく、銃身と本体の間に少し隙間を設けたのですが、今度はこれのせいで銃身が抜けやすくなりました。それは斜めに持ち上げるだけで脱落するほどで、故障しがちな機関部も加わって、低い命中率と給弾不良は日常茶飯事でした。

そして、極めつけは引き金を引かなくとも連射してしまう「自然撃発」という特殊能力(いらない)です。

これも特殊な機構のせいで発生する現象でしたが、信頼性と安全管理のどちらにおいても致命的欠陥でした。

ほかにも、100個以上の部品数がもたらす整備性の悪さ、脱落問題がありますが、これは64式小銃にも共通した悩みといえます。

なぜか改善されないまま

こうした構造的問題は小手先の改修では直るはずがなく、基本設計そのものを見直さなければなりません。

住友重機械工業の技術力不足がそもそもの原因とはいえ、性能試験の段階で見抜けなかった当時の防衛庁も責任は免れません。しかし、その後も欠陥を放置したままだった罪はもっと大きいなものです。

現場から明らかに不評だったにもかかわらず、なぜ本格的対策に乗り出さなかったのか?

当時は自衛隊への風当たりがとても厳しく、国会で左派勢力に追求されたら将来の国産開発に悪影響しか及ぼさないのが容易に想像つきました。よって、防衛庁は表立って取り上げず、なんとかやり過ごそうとした節があります。

一応、74式戦車などに載せた派生型は銃身を厚くしたものの、通常タイプを使う隊員たちは5.56mmミニミの登場まで数十年も我慢させられました。

退役したが、新しい問題も

現在は5.56mmミニミの配備が進むなか、62式機関銃は一部を除いてほとんどが退役済みです。

その結果、数々の不具合から解放されたわけですが、分隊レベルの支援火力は7.62mmから5.56mmにダウングレードしました。

自衛隊の5.56mm機関銃5.56mm機関銃への更新が進む

たしかに、ミニミはひとりでも運用できるうえ、同じ5.56mm弾を使う陸自の主力小銃「89式」とも互換性はあります。一方、世界では7.62mm機関銃も併用している国が多く、最前線の火力支援となれば、5.56mm機関銃だけでは威力・射程不足が否めません。

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