複雑すぎて高価格?96式多目的誘導弾システム「MPMS」とは

発射されるミサイル 陸上自衛隊
この記事は約3分で読めます。

高い命中率を誇るが

日本は高性能兵器を開発できる能力こそあれど、その納入先が自衛隊に限られていることから、少数調達にともなう単価の高騰にいつも悩まされてきました。

そのため、各部隊に行き渡らずに調達終了になるケースが多く、「96式多目的誘導弾システム」もその一例です。

  • 基本性能:96式多目的誘導弾(ミサイル本体)
重 量 約60kg
全 長 2.0m
直 径 0.16m
射 程 10km以上
誘 導 赤外線画像
価 格 1セットあたり約27億円
(1発:約5,000万円)

上陸した敵の撃破、そして対戦車戦を重視する陸上自衛隊では、上陸用舟艇と戦車のどちらも狙える79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)を使ってきました。そして、その後継として開発されたのが、96式多目的誘導弾、通称「MPMS(Multi-Purpose Missile System)」と呼ばれるものです。

しかし、システムの複雑化によって、両者は全く異なる兵器になりました。

重MATは人の手で運べるのに対して、MPMSは6連装の発射機と誘導装置、射撃管制装置などを載せた計6両の大所帯になり、展開完了までに時間がかかってしまいます。

これらは基本的に高機動車で運用されますが、予備弾の再装填機と情報処理装置は73式大型トラックに搭載されました。

展開状態の96式MPMS(出典:陸上自衛隊)

一方、光ファイバーによる有線誘導能力と10km以上の射程を持ち、高精度の遠距離攻撃が可能になりました。

ミサイル自身が赤外線画像装置で目標を捉えながら、その情報を光ファイバーで後送するなか、誘導手はこの画像情報に基づいて追尾指示を与えます。

このとき、対戦車であれば装甲の薄い上部を狙ったり、対舟艇では遅延作動で被害を拡大させるなど、ターゲットに応じて使い分けられます。

高コストによる少数配備

このように敵の視認範囲外から戦車を含むあらゆる車両、そして上陸用舟艇も撃破できるのが96式多目的誘導弾の強みです。

しかし、6両も必要とする大掛かりなシステムなので、準備・撤収時に敵に捕捉されやすく、そのコストも1セットあたり約27億円になってしまいました。

その結果、調達数はわずか37セットに終わり、富士学校のような教育部隊を除けば、北海道と九州の一部に配備されているのみです。

気になる後継にはついては、射程延伸と多目標への同時対処を目指した「多目的誘導弾システム(改)」を開発中で、システム全体も「高機動車×3両」まで簡素化するつもりです。

高機動車へ機能集約を図ることで、システム全体の空輸性を高めつつ、離島防衛に欠かせない機動展開力を改善します。

また、直接の後継ではないものの、「中距離多目的誘導弾」はMPMSの教訓を受けて、その生産コストを抑えながら、撃ちっ放し能力も確保しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました