なぜ21発?自衛隊も行う「礼砲」の回数や意味について

大砲を撃つ自衛官 自衛隊
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国際儀礼上のあいさつ

軍隊は戦闘組織でありながら、同時に規律・礼儀を重視したり、外交的な役割も果たします。これは古今東西を問わず、世界共通のもので、「国際儀礼」を大事にしてきました。

この軍隊の国際儀礼で特に有名なのが、空砲で相手に敬意を表す「礼砲」です。

しかし、日本では礼砲の機会が少なく、公式に招待された賓客の到着時、あるいは離日時、防衛大臣が儀礼上必要と認めた場合に限られます。

その場所は羽田空港などが多いものの、普段から礼砲の専門部隊がいるわけではなく、陸上自衛隊・第1師団の特科部隊から臨時編成します。しかも、空砲用の105mm榴弾砲は退役しており、わざわざ保管庫から出してくるそうです。

それゆえ、実際に礼砲を行うケースは珍しく、よほどの賓客や式典でもない限り、儀仗隊の栄誉礼で済まします。

海自の観音崎礼砲台(出典:海上自衛隊)

一方、海上自衛隊は外国の軍艦を迎えるとき、先方から正式な申し入れがあれば、東京湾の入口にある観音崎で礼砲をしてきました。

ここには3インチ砲を備えた礼砲台があって、国際観艦式などのゲストに向けて放ち、自衛隊の中でも最も実施回数が多いといえます。

経費節約で「21発」へ

ここで歴史をふりかえると、礼砲の起源は14世紀までさかのぼり、軍艦が敵意のなさを示すのが由来です。

当時の火砲は再装填時間が長く、あえて空砲を発射することにより、実弾を使う意思がないと証明しました。

この慣習が欧州各国に浸透するなか、イギリスは17世紀に財政難に悩み、経費節約で「最大21発」の上限を決めました。その後、この21発という数が受け継がれて、現在も国際儀礼上の規定になっています。

礼砲の回数は敬礼対象、または実施国で異なるものの、日本では以下のとおりです。

発射数 対 象
21発 国家元首(国王、大統領)、皇族、国旗
19発 首相、副大統領、国賓
17発 閣僚、大使、大将
15発 公使、中将
13発 臨時代理大使、少将
11発 臨時代理公使、総領事、准将
7発 領事
細かく決まっているとはいえ、通常は首脳や高級将官に対して行い、閣僚・大使以下はほとんどやりません。相手が求めたら別ですが、そこまで要求する国はおらず、むしろ強いるのは儀礼欠如になります。
したがって、日本では国家元首クラス、国賓に行う場合が多く、直近では天皇陛下の即位時(2019年)が記憶に新しいです。このとき、陸自の臨時中隊が3〜5秒の間隔を空けながら、合計21発を放ちました(発射間隔も決まっている)。

練習艦隊が1番使う?

逆に「受ける側の返答」という点では、海自の練習艦隊は世界中に寄港する以上、最も多く礼砲を放ってきました。

海自の新米幹部は幹部候補生学校を卒業後、練習艦「かしま」などの練習艦隊に乗り込み、そのまま世界一周の研修航海に出かけます。定期補給で各地に寄港するとき、相手国から歓迎の礼砲を受けることが多く、「かしま」には礼砲用の小型砲が設置されています。

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