初級幹部の研修の場
海上自衛官は基本的にみんな「船乗り」ですが、初めから航海に慣れている人は少なく、入隊後の教育訓練を通じて一人前の船乗りになります。そんな訓練の総仕上げとも言えるのが実際に船に乗って学んだ知識及び技能を実践する遠洋航海であり、そのために存在するのが「練習艦」。
練習艦には専用に建造された船と第一線から外れた艦船の2つのタイプがありますが、海上自衛隊では両方とも運用中で、旧日本海軍の時代から充実した練習艦隊を有してきました。
⚪︎基本性能:練習艦「かしま」「はまかぜ」
かしま | はたかぜ | |
排水量 | 4,050t | 4,600t |
全 長 | 143m | 150m |
全 幅 | 18m | 16.4m |
乗 員 | 360名 | 260名 |
速 力 | 25ノット (時速46.3km) |
30ノット (時速55.6km) |
航続距離 | 6,000浬 (約11,000km) |
6,000浬 (約11,000km) |
兵 装 | 76mm速射砲×1 3連装魚雷発射管×2 礼砲×2 |
5インチ速射砲×2 20mm CIWS×2 対空ミサイル発射機×1 8連装アスロック発射機×1 4連装SSM発射機×2 3連装魚雷発射管×2 |
価 格 | 約500億円? | 1隻あたり600億円 |
現在、海上自衛隊は「かしま型」と「はたかぜ型」の2種類の練習艦を運用しており、前者が専用に建造されたタイプ、後者が元・護衛艦を転用したもの。
ついこの間までは同じ元・護衛艦の「しまゆき」も練習艦隊に所属していましたが、世代交代を受けて完全退役しました。
これら練習艦は幹部候補生学校や術科学校の学生が実習の場として使用されますが、特に江田島の幹部候補生学校を卒業した幹部自衛官は、卒業式を終えたら同校沖合に停泊した練習艦にそのまま乗艦するのが伝統となっています。
「かしま型」は1隻のみの建造ですが、同じ専用練習艦として長年活躍した「かとり」の後継艦であることから、実習生の乗員を考慮したゆとりある設計になっています。例えば、200人近くが入る講堂と女性専用区画が設けられており、艦橋やCICなどの各所も通常の護衛艦より広いそうです。
また、実習の場ということで、ミサイル発射のシミュレーションを行える機材が設置されています。そして、遠洋航海で世界各国を訪問する関係上、国際儀礼用の礼砲が2門あるうえ、来賓用の特別公室や式典・会食用の天幕も用意されています。
もう一方の「はたかぜ型」は、もともとイージス艦が登場するまで艦隊防空用のミサイル護衛艦だったものの、「まや型」イージス艦の就役で練習艦に変更されました。元・護衛艦ということもあって、より現場に即した実習ができる反面、設計上は多数の実習生を想定しておらず、居住性と教育設備では「かしま」に劣ります。
それでも、護衛艦特有の兵装が充実しているため、実際の武器を操って学べる点では「はたかぜ」に軍配が上がるかもしれません。
したがって、全体的な研修や航海全般に関する実習は「かしま」、個々の兵装については「はたかぜ」というように使い分けることが可能であり、練習艦としての役割では前者がメイン、後者がサブという感じでしょうか。
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