威容を見せつけるだけが目的にあらず
2022年11月6日、神奈川県の相模湾で海上自衛隊創設70周年を記念する国際観艦式が実施され、海自艦艇に加えてアメリカやオーストラリア、韓国など12カ国の艦船も参加しました。
40隻近い艦艇と30機以上の航空機が参加した令和4年度観艦式ですが、そもそも観艦式とは何なのか?
まず、観艦式の由来は1341年まで遡りますが、英仏戦争中のイギリスで当時の国王エドワード3世が艦隊を率いて出撃する際、その威容を自ら確かめたこと(観閲)が始まりとされています。
日本では明治元年にあたる1868年に大阪湾で明治天皇が観閲したものが最初とされており、その後も日露戦争における戦勝を祝う凱旋観艦式や昭和天皇の即位を記念したものなど、計18回が戦前に実施されました。
むろん、1945年の敗戦で観艦式を担ってきた帝国海軍が消滅するわけですが、この伝統は戦後も海上自衛隊に受け継がれており、海自発足から3年後の1957年10月に東京湾で戦後初の観艦式が開催されています。
この当時の観艦式は現在とは異なり、ほぼ毎年行われているうえ、場所も東京湾や大阪湾、博多湾などその時々で変わりました。
ところが、1973年にオイルショックが発生して燃料価格が高騰すると、多数の艦艇を動かして膨大な燃料を消費する観艦式は一旦中止となりました。
復活は1981年まで待たねばならず、これ以降は3年に一度の開催となりましたが、これは海自の観艦式に相当する目玉パレードである陸上自衛隊の「中央観閲式」と航空自衛隊の「航空観閲式」を順番に持ち回るためでもあります。

「海軍のパレード」である観艦式ですが、その目的は自国の士気を高めたり、味方及び敵に対して自軍の威容をアピールするのが本来の狙いです。
仮想敵国を含む外国の駐在武官を招いて目の前で威容を見せつけるわけですが、外国艦艇が国際交流という名目で観艦式そのものに参加するケースもあります。
例えば、最近の海自観艦式にはアメリカやオーストラリアの艦艇が参加し、逆に2019年に行われた中国海軍の観艦式には日本の護衛艦が派遣されました。
また、仲が悪いことで知られるインドとパキスタンが日本の観艦式で交流したように、観艦式は普段は交わらない国同士が接触を図れる良い機会でもあり、外国艦艇もあえて招くことで貴重な「外交の場」としても機能します。
航海と寄港によって外国と関わることが多い海軍は現地ではそのまま自国を代表することになるので「海の外交官」ともいえる立場です。例えば、海自は洋上の迎賓館とも称される特務艇「はしだて」を保有していますが、これも国際親善の場として活用するため。
国は違えども同じ海を航海する者同士は分かり合える部分も多いことから、観艦式は国際親善の促進と国際関係の安定化を図るうえで非常に意義深いイベントなのです。
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