日本版海兵隊?水陸機動団とは

陸上自衛隊

自衛隊初の水陸両用部隊として登場

陸上自衛隊には「水陸機動団」という部隊があります。これは、離島防衛及び奪還を目的した水陸両用部隊であり、「日本版海兵隊」と呼ばれることもあります。部隊は主に長崎県・佐世保市に配備されており、現時点で2個連隊を基幹とした2,400人が所属しています。

元々、九州と沖縄方面を防衛する陸上自衛隊の西部方面隊には「西部方面普通科連隊(西普連)」という部隊がありました。他の方面隊と異なり、南北1,200km、東西900kmの広大な守備範囲の中に多数の離島を抱える西部方面隊にとって、離島防衛は当初から現実的なシナリオだったのです。そこで、離島奪還を目的とする部隊として2002年に西普連が創設されました。約700名で構成されたこの連隊は、名前こそ「普通科(つまり、歩兵)」が付きますが、戦闘用員の半数以上がレンジャー隊員という精鋭部隊でした。

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どころが、2000年〜2010年代を通じて中国の膨張と海洋進出が激化すると、尖閣諸島を含む南西方面における離島防衛のシナリオがかつてないほど現実味を帯びてきました。そこで、従来の西普連だけでは対応できないと判断し、同連隊を基盤に本格的な水陸両用部隊を編成することを決めます。これが2018年に新編された「水陸機動団」です。

ゴムボートで上陸する隊員(出典:陸上自衛隊)

こうして新編された水陸機動団は、西部方面普通科連隊を第1水陸機動連隊に改編し、新たに第2水陸機動連隊を作ります。本部を含む主要部隊は長崎県・佐世保市に配備されますが、同市には海上自衛隊の第2護衛隊群と米海軍の揚陸艦部隊の基地があります。特に、米海軍の揚陸艦部隊が近くにいることで、平時から米海兵隊との上陸訓練が実施しやすい環境です。

前身部隊の西普連があるとはいえ、陸自にとって本格的な水陸両用作戦は未経験であり、ほとんどゼロからのスタートです。そのため、装備やノウハウの取得は同盟国であり、実戦経験豊富なアメリカに頼らざるを得ません。特に、有事の際に行動を共にすることが想定される米海兵隊との共同訓練や隊員の派遣研修を通じて早期戦力化を目指します。アメリカ側としても、中国との最前線たるインド太平洋は米本土から遠く、戦力投射に時間がかかるため、同地域の最大の同盟国である日本が水陸両用能力を持つのは賛成です。

水陸機動団はエリート部隊?

陸自の新しい部隊として創設された水陸機動団ですが、水陸両用作戦は通常の陸上戦闘よりも求められるスキルが格段に高く、そのため所属する隊員にも高い基準が適用されます。例えば、離島への上陸作戦といっても、ゴムボートで潜入する場合や車両による大規模上陸、ヘリからの降下など様々なシナリオが考えられます。つまり、隊員はこれらに全て対応できないとダメなのです。

前身部隊の西普連は単独で離島奪還を目指すというよりは、先遣隊として島に潜入して、偵察・情報収集などの各種工作活動とゲリラ戦を行うことを想定していました。そのため、西普連を「特殊部隊」として捉えることも可能であり、実際に「特殊作戦隊員手当」が支給されていました。そのため、西普連の流れを汲み、レンジャー隊員が多数所属する水陸機動団もある意味「特殊部隊」と言えます。ただ、従来の潜入工作任務に加えて、本格的な奪還も担うことになったため、ハードルはさらに高くなりました。

新たに導入した水陸両用車AAV-7(出典:陸上自衛隊)

現在の安全保障環境を考えた場合、離島防衛・奪還が最もあり得る有事です。そのため、離島防衛を主任務とする水陸機動団に優秀な隊員が優先的に配置されるのは当然のことです。世界最強のアメリカ軍でも、陸軍よりも海兵隊の方が「エリート」と見なされるのと同様、陸上自衛隊内でも他部隊よりも高い能力が求められる水陸機動団は、まさにエリート部隊と言えます。

さて、そんな水陸機動団ですが、装備面でも他部隊とは異なります。例えば、離島奪還では沖合いの艦艇から部隊を発進させて上陸するためのゴムボートや水陸両用車が配備されています。特に、水陸両用車として米海兵隊も使用しているAAV-7を58両調達して水陸機動団に集中配備しています。他方、上陸作戦は敵の反撃が来る前に橋頭堡を築く「時間との勝負」であるため、揚陸に手間取る戦車や自走砲などの重装備は配備されていません。代わりに、火力支援として迫撃砲を多く装備しています。

水陸機動団の今後

まだ発足して間もない水陸機動団ですが、今後は第3水陸機動連隊を2023年に新編して3個連隊体制(人員3,000名)を目指します。装備面でも、陸上自衛隊にオスプレイが導入されることから、水陸機動団の航空輸送にもオスプレイが活用されると思われます。オスプレイの配備先が近くの佐賀空港というのも、水陸機動団の輸送を想定してのことでしょう。

目下、最大の課題は「いかに早く戦力化するか」でしょう。新設部隊とはいえ、陸上自衛隊の定員自体が増えたわけではないので、従来の枠の中で人員のやり繰りをするしかないのです。全国からレンジャー資格を持つ者をかき集めていますが、それは既にいる自衛官の配置替えに過ぎません。今後はただでさえ少ない入隊希望者に、水陸機動団を目指してもらう工夫が必要となってきます。「日本の海兵隊」を全面に押し出したり、他部隊と異なる高いスキルの取得とそれに伴う各種手当(洋上潜入、水陸両用に関する特殊作戦隊員手当)を魅力として掲げるのも良いでしょう。

現在、水陸機動団は上陸作戦を想定した訓練を実施しており、米軍との共同訓練の頻度も従来よりも多くなっています。元々、レンジャーを含むエリート隊員が優先配備される同機動団ですが、必要なノウハウは一朝一夕で取得できるものではなく、戦力化にはまだ時間がかかりそうです。

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