地獄すぎる訓練?レンジャー隊員の強さや伝説について

走る自衛官たち 陸上自衛隊
出典:陸自・第7師団
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エリートを育てる特別教育

日頃から訓練と体力錬成に取り組み、いちばん「ザ・軍隊」に近い陸上自衛隊ですが、なかでも「レンジャー隊員」は別格扱いされます。

これはサバイバル生活を送りながら、潜入や破壊工作を行う特殊資格であり、レンジャー課程というコースを卒業せねばなりません。

その創設は1958年までさかのぼり、アメリカ陸軍のレンジャー課程をふまえて、一般隊員より高い戦闘能力はもちろん、肉体的・精神的な強靭性を目指したものです。

山岳サバイバルの印象が強いとはいえ、ほかにも複数のコースがあって、それぞれの特色に合わせて訓練内容が異なります。

まず、一般的なレンジャー訓練である「部隊集合教育」について。これは各師団内の連隊が持ち回りで行い、参加隊員は自ら志願したうえで、学力試験・体力検定・健康診断を受けます。

特別プログラムである以上、基本的には30名前後の少人数教育になり、試験の上位者しか選ばれません。そのため、体力検定で足切りされる者が多く、部隊トップクラスの体力が必須条件です。

ちなみに、女性隊員は受けられないものの、第1空挺団でも女性隊員が誕生するなど、自衛隊全体で女性自衛官の活躍が進み、将来的には女性レンジャーも誕生するかもしれません。

過酷、超多忙、理不尽の日々

無事に入門試験に合格すると、約3ヶ月にわたって体力・精神の限界に挑み、まさに「地獄の日々」を過ごします。これは大げさな表現ではなく、自衛官ですら引くレベルの過酷さ、多忙さ、理不尽さが待ち構えています。

教育期間中は心休まる時がなく、まともに食事や休暇すらとれません。いつ教官の命令が飛んでくるか分からず、どんな要求にも大声で「レンジャー!」と叫び、絶対服従せねばなりません。

現代社会からすれば、ブラックすぎるパワパラですが、レンジャーとは誰もが逃げ出すような状況でも、与えられた任務をこなす特務兵なのです。

教官や助教はわざと「鬼」を演じながら、安全第一の訓練を心がけるも、あまりの過酷さから、これまで死亡事故も起きてきました。学生たちは言うまでもなく、教育する側も気を付けないと、本当に死んでしまうのがレンジャー訓練です。

最初は「基礎訓練期間」から始まり、高所から飛び降りたり、懸垂や腕立て伏せ、10マイル持久走(16km)を行い、ひたすら胆力と体力を鍛えます。

その後、山岳戦闘の訓練に加えて、サバイバル知識を身につけますが、ここで有名な「生きたヘビを捌いて食べる訓練」が登場します(ニワトリの場合もある)。ヘビ自体は教官が用意しており、その味は淡白で美味しいと評判です。むろん、これは食用可能な野生の動植物を知り、生存自活に備える狙いがあります。

山中を行軍する訓練生(出典:陸上自衛隊)

この山中訓練では、ほかにも以下のようなメニューをこなします。

  • ヘリからの降下潜入
  • ゴムボートを使った潜入
  • 敵に対する待ち伏せ攻撃
  • 敵の補給線、指揮所の破壊工作
  • 橋梁やトンネル爆破などの後方撹乱
  • 捕虜の獲得、または捕虜の奪還
  • 敵地でのパルチザン活動

このような訓練を通して、レンジャー候補生は少人数、極端にいえば「最後の一兵」になっても、ゲリラ戦を展開する技能を修得します。

そして、最後の想定訓練は数日間にわたり、不眠不休で山を移動しながら、ほとんどの隊員が極限状態に追い込まれます。この間は食事も睡眠もロクにとれず、意識が飛ぶなか、気力だけで任務を完遂しなければなりません。

この最終関門を乗り越えると、家族と同僚が出迎える駐屯地に帰り、レンジャー徽章(バッジ)が帰還式で授与されます。

このバッジは地獄を耐え抜き、最後まで残った者しかもらえず、レンジャー隊員の誇りであるとともに、部隊内で一目置かれる印です。そのデザインは不撓不屈の精神・肉体を表すダイヤモンド、勝利を象徴する月桂樹の葉っぱが描かれています。

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