地対艦ミサイル連隊の主力
陸上自衛隊は敵を海岸線付近で迎え撃ち、なるべく上陸を防いだり、そのまま撃退するのが役目です。このとき、沖合の敵艦艇に攻撃を加えるべく、陸自は「地対艦ミサイル連隊」を運用してきました。
地対艦ミサイルはトラックで機動展開できるほか、沿岸部で敵を待ち構えたり、発見されにくい山間部に隠せる優れものです。
「12式地対艦ミサイル」の配備が進むなか、ひと世代前の「88式地対艦ミサイル」も使われており、その威力は全然有効とされています。
- 基本性能:88式地対艦ミサイル
重 量 | 660kg |
全 長 | 5m |
直 径 | 0.35m |
射 程 | 150〜200km |
速 度 | 時速1,150km |
価 格 | 1発あたり約3〜4億円(推定) |
88式は地対艦ミサイルとはいえ、そのベースは航空自衛隊の80式空対艦ミサイルであって、弾頭を含む基本構成を流用しました。
6連装の発射機を大型トラックに載せながら、同じく移動式の指揮統制装置、射撃管制システム、捜索レーダー、再装填装置などで運用チームを作ります。この組み合わせや規模は任務次第で変わり、柔軟な運用ができる機動兵器になりました。
実際は捜索レーダーのみが沿岸部に進み、発射機などは内陸部で待機しますが、この場合は中継装置を通して情報伝達します。ほかにも、海上自衛隊のP-3C哨戒機などからの情報に基づき、手動入力での目標設定が可能です。
発射される88式地対艦ミサイル(出典:陸上自衛隊)
発射後は自ら位置・速度を割り出す慣性航法装置を使い、あらかじめ設定された経路を進みます。なるべく探知を回避すべく、複雑な地形に沿って飛びながら、海上に出ると高度を下げる仕組みです。そして、最後は自身で目標をとらえるべく、レーダーから電波を出します。
また、電波妨害に対する耐性を持ち、ベースとなった80式ミサイルよりも飛行安定性が高く、定期の実弾射撃訓練では全弾命中の記録を更新中です。
まだ全然使えるわけ
一方、新しい12式地対艦ミサイルと比べた場合、誘導機能や命中精度では劣るものの、対艦兵器としての打撃力はさほど変わらず、いまも十分な脅威を与えられます。
たとえ単体では性能不足でも、他の対艦兵器やドローンと組み合わせれば、相手の防空能力を圧迫したり、陽動・撹乱には使えます。
そもそも、地対艦ミサイルは速度が比較的「遅く」、最近は有効性が疑問視されていましたが、2022年に起きた巡洋艦「モスクワ」の撃沈がこれを覆しました。ウクライナの「ネプチューン・ミサイル」の大戦果により、地対艦ミサイルの脅威が再認識されました。
機動運用・展開すれば、少なくとも敵の沿岸部への接近を防ぎ、その行動を制限できるはずです。これだけでも運用側のメリットは大きく、島国・日本には欠かせない兵器といえるでしょう。

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