10kWのレーザーで無力化
自爆ドローンなどの新しい脅威を受けて、世界各国がその対策を急ぐなか、日本も対ドローン用のレーザー兵器を開発しました。
防衛装備庁が2010年代から研究に取り組み、その名は「車両搭載型高出力レーザー実証装置」となっています。
2024年11月の観閲式で初公開されましたが、重装輪回収車をベースにしながら、高出力レーザーや電源、冷却装置を搭載しました。捜索レーダーは人の手で車外展開するとはいえ、トラック1両への機能集約を図り、機動展開しやすいシステムになりました。
近赤外線タイプのレーザーは10kWの出力に加えて、約1kmの射程距離を持ち、車体上部の回転式砲塔から発射されます。砲塔には赤外線カメラ、レーザー測距器もあって、目標を撃墜するまで捕捉・追跡可能です。
しかも、電源さえあれば、連続して照射できるほか、そのコストは対空ミサイルよりはるか安い上がりです。安価な小型ドローンに対して、高いミサイルをぶつけるのは割合わず、レーザー兵器の方が圧倒的に費用対効果で優れています。
ドローンへの照射実験(出典:防衛装備庁)
ところで、10kWというのはミサイル撃墜には足りず、あくまで小型ドローンを念頭に置いた出力レベルです。これは防衛装備庁の動画からも分かり、よくある民生品のドローンを「焼く」様子が映っています。
一方、ミサイルや砲弾も撃墜すべく、さらに高出力の100kW級を開発中ですが、こちらは車両には納まりきらず、いまは固定式の地上砲台になっています。それでも、2023年の試験では81mm迫撃砲弾を破壊するなど、開発は着実に進んでいるようです。
まだ実証段階に過ぎない
観閲式でお披露目されたとはいえ、その名前からも分かるように、まだ実証段階にすぎません。正式採用にはいたっておらず、具体的にどこの部隊に、どれだけ配備するかも不明です。
日本がレーザー兵器を作り、実用化のメドまで立てたのは、それなりの宣言効果はあるでしょう。脅威が高まるドローンに対して、日本は低コストで有効な対抗手段を手に入れた、と一応はアピールできたわけですから。
このあたりは、同じ防衛装備庁が開発中のレールガンと似ています。
しかし、それが戦場で使い物になるかは別問題です。
試験では滞空中のドローンは撃ち落としているものの、自爆ドローンのように突入してくる目標に対処できるかは分かりません。そもそも、自衛隊自身が自爆ドローンを持っておらず、実戦形式のテストができない事情もあります。
すなわち、現時点の情報で推測すれば、上空にいる小型偵察ドローンは撃墜できます。一方、複雑に動く自爆ドローンは難易度が高く、さらなる改良、あるいは追加情報を待つしかありません。
戦争は技術進歩を加速させますが、これはドローンについても同じです。
ウクライナでのドローン戦はすさまじく、電波妨害などの対策を講じても、わずか1ヶ月で通用しなくなると言われています。それだけ日進月歩で進み、対抗措置とのイタチごっこになるわけですが、このような現実もふまえて、レーザー兵器の開発を急がねばなりません。
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