救助で大活躍 UH-60Jヘリ

海上自衛隊

自衛隊における救難隊の役割

自衛隊といえば、日々の防衛任務以外にも災害派遣で救助や支援を行っているイメージが強いと思います。その災害派遣でほぼ毎回活躍するのが自衛隊救難隊のUH-60J救難ヘリです。悪天候にも強い優秀な機体ですが、実は本来の用途は「災害派遣」ではありません。

そもそも自衛隊の救難隊は墜落及び遭難した味方を捜索・救助するために存在します。例えば、航空自衛隊の救難隊は墜落した戦闘機パイロットなどを救出するのが本来の任務です。そのため、戦闘機が日々の訓練で飛び立つ際も、必ず救難隊のU-125とUH-60Jがすぐ救助に向かえるように待機します。実際に救助要請が入ったら、まずはU-125が捜索に向かい、要救助者を発見したら位置を後方のUH-60Jに伝達し、現場に駆けつけたUH-60Jが救助を行うわけです。

この救出体制の有無が実戦部隊に与える心理的影響は大きく、救難隊がいることで戦闘機パイロットは「万が一の時は味方がきちんと救助に来てくれる」という一種の安心感を持てます。

セットで運用されるUH-60J(手前)とU-125(奥)(出典:航空自衛隊)

映画「アルキメデスの大戦」で戦艦大和によって米軍機が撃墜された際、脱出したパイロットをすぐに米軍の飛行艇が救助するシーンがありました。その様子を目撃した戦艦大和の乗員が唖然としていたのが印象的でしたが、これは片道任務の日本側と味方を救助する体制が確立されているアメリカ側を対比しています。

このように、最前線で戦う実戦部隊に安心感を与え、いざという時にはしっかり救出するのが自衛隊救難隊の役割です。もちろん災害派遣や遭難事故、急患輸送にも出動しますが、これらはあくまで副次的な任務であり、主任務ではありません。

ただ、国民にとって自衛隊は「最後の砦」であることに変わりはなく、救難隊も警察や海上保安庁では対処しきれない案件を担当します。救難隊の自衛官が「海保が投げた案件をうちが担当する」と冗談っぽく語っていましたが、そこには誇りに加えて、国民を助ける最後の砦というプロ意識が感じられました。

待望の全天候型救難ヘリとして

それでは、救難隊が運用するUH-60Jについて見ていきましょう。

⚪︎基本性能:UH-60J

全 長15.65m
全 幅5.43m
全 高5.13m
乗 員5人
速 度最大時速265km
航続距離1,295km
価 格1機あたり約45〜50億円

UH-60JはアメリカのUH-60「ブラックホーク」をベースに開発された日本独自の救難ヘリであり、三菱重工業が生産している機体です。映画「ブラックホーク・ダウン」では民兵に撃墜されるシーンが印象的ですが、ブラックホーク自体は高い性能と信頼性を持つ機体であり、米軍を筆頭に世界各国で愛用されています。

航空自衛隊と海上自衛隊は救難用のUH-60Jを、陸上自衛隊は主に輸送目的で多用途型のUH-60JAを運用中であり、海上自衛隊の護衛艦によく搭載されているSH-60哨戒ヘリもブラックホークの派生型になります。

UH-60Jは全天候型救難ヘリであり、機首には気象レーダーと捜索用の熱線映像装置(サーモグラフィー)が付いています。また、両側の窓は半球に膨らんだバブルウィンドウを採用していますが、これは要救助者を発見しやすくする工夫です。実際に要救助者を見つけたら、救助用のホイスト装置を使ってヘリまで上げます。

UH-60J(出典:航空自衛隊、筆者加工)

捜索・救助活動においては、できるだけ長い航続距離と活動時間が求められるため、機体の左右には大きな増槽(燃料タンク)を備えており、機体後部も燃料タンクが大部分を占めています。航空自衛隊の一部機体は空中給油装置も付いているため、航続距離を延長することが可能です。

空自と海自のUH-60Jは性能面ではほとんど変わりませんが、外見はまるで違います。海自のは要救助者がヘリを視認しやすいように白とオレンジの派手な塗装を施しています。一方、空自のUH-60Jは洋上迷彩のダークブルーを採用しており、海自のとは真逆の塗装。

空自のUH-60J(左)と海自のUH-60J(右)(出典:航空自衛隊、海上自衛隊)

空自も元々は白とオレンジの塗装でしたが、有事における救助活動では敵に攻撃される危険もあるため、目立たない塗装に変更しました。特に、昨今は不審船や武装漁民などのグレーゾーン事態も顕著になりつつあり、目立つ塗装では撃墜される危険性が増すと判断したようです。今後、海自も洋上迷彩に変更するかもしれません。

塗装に加えて、空自の一部機体にはミサイル警報装置とチャフ/フレア発射装置などの最低限の自己防御機能が付与されました。チャフ/フレア発射装置は機体の左側に付いており、発射されたチャフは機体右側のローターから受ける風によって拡散されます。

UH-60Jの後継機はUH-60J

現時点では、空自が41機、海自が12機のUH-60Jを保有していますが、後継機はどうなるのでしょうか。

1988年から調達が開始されたUH-60Jですが、先述のように優秀な機体であるため、空自の後継機は改良型の「UH-60J Ⅱ」となりました。40機ほどが配備予定のこの機体は、ミサイル警報装置、熱線映像装置、エンジンを変更し、ワイヤーカッターと赤外線排出を抑制する装置を加えたものです。

さらに、コックピットにナビ用の地図が追加されたことで災害派遣での活動が容易になりました。災害派遣では病院の屋上や学校の運動場に着陸することがありますが、今まではパイロットがGoogleMapと下の地形を照らし合わせながら飛んでいたそうです。ナビの追加によって、学校や病院がひと目で分かるようになったため、現場への急行がかなり楽になったとのこと。

一方、海上自衛隊はUH-60Jの後継機としてSH-60哨戒ヘリの救難仕様を調達しますが、これは護衛艦への搭載も視野に入れた上での選定でしょう。

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