同軸反転ローターのヘリ
ロシアがウクライナを侵略したとき、地上部隊の侵攻だけではなく、大規模な空中機動作戦を行い、首都近郊の空港を一時制圧しました。
そこでは輸送ヘリとともに、護衛の攻撃ヘリが強襲に加わり、「Ka-52」もそのひとつでした。
- 基本性能:Ka-52アリゲーター
| 全 長 | 13.5m |
| 全 幅 | 14.5m |
| 全 高 | 4.9m |
| 乗 員 | 2名 |
| 速 度 | 時速350km |
| 航続距離 | 1,160km |
| 高 度 | 5,500m |
| 兵 装 | 30mm機関砲×1(450発) 対戦車ミサイル 空対空ミサイル ロケット弾ポッド |
| 価 格 | 約25億円 |
ロシアが誇る戦闘攻撃ヘリとして、「アリゲーター(ワニ)」の愛称があるものの、実際は「Ka-50」の改良・複座型にあたり、基本設計は1980年代までさかのぼります。
Ka-50は単独で操縦と射撃を担い、当時は画期的な発想だったとはいえ、逆にパイロットの負担が増えたため、結局は採用されませんでした。
そこで、Ka-50の複座型をつくり、これがKa-52になりました。
そんなKa-52は奇妙な外観を持ち、まずは通常のヘリコプターと違って、尾部のテールローター(回転翼)がありません。
その代わり、2つのメインローターが上下に重なり、互いに逆方向に回転します。
本来はメインローターが回転すると、その反動で機体が逆方向に回るため、それを打ち消すテールローターが必要です。
しかし、2つのメインローターを置き、それぞれが上下で逆回転すれば、互いに反動を打ち消し合い、テールローターは必要ありません。
これは「同軸反転ローター」と呼び、テールローターがない分、全長を短くできるほか、テールローターへの被弾リスクがなく、生存性が上がります。
優れた火力と生存性
そんなKa-52は以前の反省をふまえて、搭乗員が2名体制になったとはいえ、コックピットは通常の前後(縦列)ではなく、横並びの配置になりました。
左席にパイロット、右席に兵装の操作員が座り、同じ視界を共有しながら、互いに連携しやすくしました。
生存性を高めるべく、コックピット周辺は装甲で覆い、20mm弾まで耐えられる設計です。さらに、座席には射出装置が付いているうえ、緊急時はローターが爆発で吹き飛び、搭乗員を安全に脱出させます。
Ka-52攻撃ヘリ(出典:ロシア軍)
攻撃では30mm機関砲とともに、対戦車ミサイル、空対空ミサイル、ロケット弾ポッドを使い、地上に多様な火力を降らせてきました。
最大2,000kgまで武装を詰め込み、80mmロケット弾は最大40発、対戦車ミサイルは種類によるが、12〜24発まで搭載できます。
ま機関砲やロケット弾で射撃すれば、一帯を「面」で制圧できますが、長距離の誘導弾を使えば、敵を射程外から精密攻撃できるなど、任務に即した柔軟性を発揮可能です。
ウクライナでの大量損失
Ka-52は期待の攻撃ヘリとして、1990年代に開発が始まったあと、2011年にようやく配備されました。170機以上が調達された結果、実質的な主力攻撃ヘリにあたり、ウクライナ侵攻でも多数投入しました。
ところが、「特別軍事作戦」は上手くいかず、戦争が長期化するにつれて、Ka-52の損害も増えていきました。現時点でおよそ70機を失い、少なくとも1機が鹵獲されました。
その消耗ぶりはかなり際立ち、ロシア軍機では最多の損失数です。
高火力だが、損失も多い
では、なぜ損失が大きいのか?
まず、西側の軍事支援にともなって、ウクライナに多くの防空兵器が流れ込み、アメリカの「スティンガー・ミサイル」など、携行型の防空兵器が活躍します。
実際の撃墜映像が何度か確認されており、低空を飛ぶヘリの限界が露呈しました。
特に戦争初期は損失が多く、その後は慎重な運用に変わり、徐々に損害も減っていきます。
それでも、いまや無数のドローンが飛び交い、いくら低空飛行で探知を避けても、監視ドローンに見つかってしまい、思うように活動できていません。
しかも、攻撃ヘリは戦闘機より遅く、自爆ドローンが追い付き、体当たりされてきました。
逆にドローンを撃墜したり、ミサイルやロケット弾を放つなど、一定の活躍はしていますが、かつてほどの生存性は見込めず、現状では厳しい運用環境です。
他方、こうした変化はKa-52に限らず、全ての攻撃ヘリに共通するため、特段劣っているわけではなく、投入数に比例した結果でしょう。
装甲防護力が甘かったり、構造上の欠点はありますが、これだけ携行式の防空兵器、ドローンが発達・普及してしまえば、どんなヘリも似たリスクにさらされます。
不透明な将来性
さて、ロシアはウクライナでの経験を受けて、改良型の「Ka-52M」に取り組み、100機以上の新規調達に加えて、残るKa-52も改修するつもりです。
夜間時の兵装オプションを増やしたり、荒天時の戦闘能力を上げたほか、ドローンとの連携が可能になり、索敵機能も刷新されました。
されど、以前より活躍の場が減ったうえ、地上戦力とドローンの補充を優先せねばならず、順調に生産できるか分かりません。
艦載型のKa-52K(出典:ロシア軍)
ほかにも、艦載型の「Ka-52K」もあり、折りたたみ式のローター、不時着水時の生存システム、耐塩・防腐加工を加えています。これは「ミストラル級」強襲揚陸艦に積み、フランスが使用予定だったものの、2014年のクリミア併合で白紙化になり、現在はロシア海軍が持て余しています。
ウクライナ侵攻が長引き、地上戦力を損耗する限り、強襲揚陸艦に割く資源は少なく、艦載型の需要は低いままです。
行き場を失いかけているなか、中国がこの艦載型に興味を抱き、強襲揚陸艦で運用しながら、台湾侵攻計画を進めたいようです。本当に購入すれば、日本にとっても見過ごせず、南西諸島の脅威になるでしょう。


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