強襲揚陸艦にF-35Bを満載?ライトニング空母とは何か

アメリカの強襲揚陸艦 アメリカ
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「F-35B×20」で軽空母化

アメリカ海軍の強さの秘訣は、最新鋭の「ジェラルド・フォード級」をはじめとする11隻の原子力空母にありますが、10隻以上保有している強襲揚陸艦の航空運用能力も軽視できません。

主にヘリコプターを使って水陸両用作戦を行う強襲揚陸艦は、空母同様に全通式甲板を持つことから「垂直/短距離離着陸(V/STOL)」タイプの戦闘機・攻撃機も運用可能です。

今までの強襲揚陸艦もあの有名な「ハリアー・シリーズ」を使ってきましたが、これらは最新のステルス戦闘機「F-35ライトニングII」に置き換えられました。そして、このF-35Bを10〜20機ほど載せれば、強襲揚陸艦は事実上の軽空母へと生まれ変わります。

アメリカが目指しているのはまさにこの強襲揚陸艦の軽空母化で「ライトニング空母構想」と呼ばれています。この構想自体は新しいものではなく、かつて存在した「ハリアー空母」をやき直したものです。

ただし、性能面で飛躍的進化を遂げたF-35Bを使う点では、ライトニング空母はハリアー空母よりも強力な存在になります。

強襲揚陸艦から発艦するF-35B(出典:アメリカ海軍)

米海軍の強襲揚陸艦に載せるF-35Bは米海兵隊所属になりますが、海兵隊では最終的に185機以上を調達するつもりです。

これだけで日本が導入予定の147機(A型:105機、B型:42機)を超える数字ですが、これらを強襲揚陸艦にそれぞれ15〜20機ほど載せたら、いきなり10隻近い軽空母群が誕生します。もちろん、整備や訓練、通常任務などを考えればこの数はあり得ませんが。

とはいえ、理論上は1隻の強襲揚陸艦に最大20機ほどのF-35Bを搭載可能で、これだけで他国の正規空母に匹敵するレベルです。この満載状態では、あとは空中給油用のV-22オスプレイといくつかの哨戒ヘリしか載せられず、航空戦に欠かせない早期警戒は飛来する早期警戒管制機などに頼るものと思われます。

それでも、中国のような相手以外では十分に航空優勢を狙える能力を持ち、もはや軽空母というよりは準正規空母に近く、その戦力規模は海上自衛隊の「いずも型」よりも大きく、イギリスの「クイーン・エリザベス級」に劣るぐらいです。

原子力空母より気軽に使える

では、わざわざF-35Bを満載したライトニング空母は何に使うのか?

ライトニング空母は従来の原子力空母を置き換えるのではなく、必要に応じて編成して補完的な役割を果たすものです。

いくら大国アメリカといえども、金食い虫の原子力空母をあちこちに派遣するのは負担が重く、もっと安くて気軽に使えるツールが欲しいのが本音です。近年は対テロ作戦のように大型空母をわざわざ使うまでもないケースが多く、こうした任務にはライトニング空母をあてた方が費用対効果的には優れています。

こうした低烈度紛争に対してライトニング空母を投入すれば、その分だけ原子力空母をほかに回せるので、「対中国」が優先させたいアメリカにとってはかなり魅力的なオプションです。

原子力空母よりは気軽に投入できる?(出典:アメリカ海軍)

また、対中国においてもライトニング空母は「投入リスクが低い」という利点があります。原子力空母の航空戦力とその打撃力はライトニング空母と比べものにならない反面、そのコストと失った場合のダメージは計り知れません。

特に「空母キラー」の対艦弾道ミサイルも想定したA2AD戦略を進める中国に対して、建造費3,600億円・人員5,000名の原子力空母を前線投入するリスクは高く、こうした相手には使いづらくなっているのも事実です。

みなさんが持っているモノでも、高くて貴重すぎるからあまり使いたくないものがあるのではないでしょうか。原子力空母も似たようなもので、強大な存在がゆえに失う恐怖にもかられやすく、心理的に使いづらいこともあるのです。

一方、ライトニング空母は搭載数こそ劣るものの、投入リスクは原子力空母と比べて低く、状況に応じて編成できる柔軟性も持ち合わせています。そして、失われたときのダメージも大型の原子力空母よりはまだ軽く済みます(あくまで相対的な話で失ってもいいわけではない)。

したがって、今後は中東地域などでの作戦にライトニング空母を使いつつ、対中国でも平時の抑止任務、そして有事における先鋒として投入する可能性があります。

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