【分かりやすく解説】中国のA2AD戦略が目指すものは?

大型ミサイルを乗せたトラック 外国関連
この記事は約2分で読めます。

米軍を近づけず、自由にさせず

中国共産党が統治における正統性を保つうえで、民主政体が統治する台湾島を放置するわけにはいかず、軍隊の急速な近代化を推し進めるのも台湾統一に向けた動きと捉えられます。

ところが、台湾侵攻となればアメリカが介入して世界最強の米軍と戦うことになるため、これを見据えた軍事戦略「A2AD」を推進してきました。

「Anti-Access(接近阻止)」「Area-Denial(領域拒否)」の二つから成る同戦略は、簡単にいえば台湾侵攻時に米軍を寄せつけず、自由に行動させないことを目指したもので、その対象は以下のとおり。

  1. 接近阻止:周辺にいる米軍(在日米軍)とその同盟国軍(自衛隊など)
  2. 領域拒否:遠方からくる空母打撃群などの米軍主力

このように近隣の米軍基地からの介入を阻止しつつ、アメリカ本土などからやってくる主力も縛るのが狙いなわけですが、前者に対しては日本の南西諸島などを結んだ「第1列島線」、後者はさらに東方に設けられた「第2列島線」というエリアで対処する方針となっています。

台湾を国内問題として捉える中国の視点に立てば、これら列島線は要するに自国防衛のための防衛線で、A2AD戦略自体もあくまで「防御的性格」を帯びたものなのです。

一方、台湾を事実上の独立政体として認識する日米にとって、この防衛戦略は現状変更につながる攻撃的なものとして映るので受け入れられません。

このように、全ては台湾の「現状」を巡る認識の違いから発生しており、台湾問題が存在する限りは第1列島線が走る沖縄周辺への中国軍の進出も続くでしょう。

台湾有事における中国の介入阻止戦略(筆者作成)

そして、この台湾統一に向けた介入阻止戦略では圧倒的戦力を誇る米軍に真っ正面から挑むのではなく、比較的廉価で高性能なミサイルを多数使う戦術を重視しています。

特に切り札とされている対艦弾道ミサイルは迎撃が難しく、動く海上目標に対する精密攻撃が可能とされていることから「空母キラー」として懸念されています。

こうした安価なミサイルで戦力投射の要である原子力空母にリスクを与えてアメリカに不利な「費用対効果」を強いて介入を躊躇させる、または行動を制限するのが狙いです。

中国軍の各種弾道ミサイルの射程(出典:防衛白書)

まとめると、低コストな精密兵器で米軍と自衛隊を叩きつつ、やってくる空母打撃群などをけん制して、遠方海域でも自由行動させないのが基本戦略になります。このように日米両軍を封じている間に、台湾を平定して既成事実を作り上げてしまうのが狙いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました