日本の巡視船をフィリピンに供与する意義について

外国関連
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沿岸警備能力の底上げ

南シナ海で中国の軍事的圧力を受けるフィリピンは、矢面に立つべき海軍が旧式艦艇ばかりで構成されているうえ、平時における沿岸警備能力も全く足りていません。

こうした状況は中国を利するだけであり、アメリカの同盟国、そして日本の友好国たるフィリピンの能力強化は国益に適うといえます。そこで、日本はフィリピンに対して計7隻の巡視船を供与して、同国の沿岸警備能力の強化を図りました。

こうしたなか、2022年には最初の2隻となる「テレサ・マグバヌア型」が引き渡され、大統領が就役式典に参加するほど歓迎および期待されました。

⚪︎基本性能:「テレサ・マグバヌア型」巡視船

排水量 2,260t
全 長 96.6m
全 幅 11.5m
乗 員 67名
速 力 24ノット(時速44.45km)
航続距離 約7,400km
装 備 放水銃、ヘリコプター格納庫、
対空レーダー、対水上レーダー、
高速ゴムボート×2、無人潜水艇
建造費 約60億円(くにがみ型)

この巡視船は外国の安全保障能力を高める枠組み「OSA」を使って日本で建造された後、フィリピンに供与されたもので、基本設計は海上保安庁の「くにがみ型」巡視船をベースにしています。

フィリピン最大かつ最新鋭の警備船となった2隻は、武器こそ放水銃ぐらいしかないものの、それまでの船舶と比べて警戒監視能力や通信機能は飛躍的進化を遂げました。

具体的に対空レーダー、対水上レーダーを備え、ヘリコプターと高速ゴムボート、無人潜水艇まで運用できるこれら日本産巡視船は、フィリピン側の海上警察力を一気に底上げするものです。しかも、追加で5隻の巡視船が建造される予定なので、同国の海上警備力に対するテコ入れは、質・量ともにまだ始まったばかり。

フィリピン支援の価値

フィリピンへの巡視船供与は、海上自衛隊のTC-90練習機を譲渡して以来のインパクトがあって、軍事分野での支援が限られる日本にとっては有力手段のひとつです。こうした動きは今後さらに加速していきますが、もちろん国内からは「バラマキ」との批判もあります。

しかし、すでに述べたように、現状では全く足りていないフィリピンの沿岸警備能力を育てることは、結果的に日本の国益にもつながるのです。

フィリピンに到着した日本産巡視船(出典:フィリピン沿岸警備隊)

フィリピンは地理的に台湾のすぐ南側に位置しており、台湾有事では沖縄とともに米軍の重要拠点になります。逆にA2AD戦略を進める中国にとっては、第1列島線の真ん中に位置するのみならず、戦略的重要性を持つバシー海峡を臨む場所にあるので、脆弱性を抱えたままの方が好都合です。

そして、このバシー海峡を含めてフィリピンは日本のシーレーン上に位置することから、同国周辺が不安定化するのは損害しかありません。

これは何も対中国に限った話ではなく、巡視船供与などを通じてフィリピンを支援すれば、周辺海域での海難事故や海賊行為などの犯罪への対応能力の向上が見込めます。こうした努力は最終的に日本のシーレーン保護につながるわけです。

また、フィリピン軍・沿岸警備隊の能力を高めれば、中国軍は南シナ海方面で対応するためのリソースを割かねばならず、その分だけ南西諸島や尖閣方面の圧力が少しやわらぎます。

つまり、フィリピンは装備の近代化を行える反面、日本としては中国軍の戦力分散、少なくとも相手の計算を狂わせる効果を期待できます。これは同じリソースを使って自衛隊強化に取り組むよりは、意外と費用対効果が高いかもしれません。

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