自立・自律型の欧州機
現代戦でドローンが大活躍するなか、アメリカは早くから同分野に取り組み、技術や経験値を独占してきました。他方、欧州は遅れをとってしまい、長年の対米依存から脱却するべく、欧州共同の開発計画を立ち上げます。
それが「ユーロドローン」に結びつき、欧州の自律性を象徴する機体として、フランス・ドイツ・イタリア・スペインが共同開発しました。
- 基本性能:ユーロドローン
| 重 量 | 1.3t |
| 全 長 | 16m |
| 全 幅 | 26m |
| 全 高 | 6m |
| 速 度 | 時速500km |
| 飛行時間 | 最大40時間 |
| 高 度 | 最大12,000m |
| 兵 装 | 最大搭載量:2,300kg 対地ミサイル、誘導爆弾など |
| 価 格 | 約200億円 |
ユーロドローンは大型無人機にあたり、中・高度域を長時間滞空しながら、警戒監視をする「MALE機」です。
同じドローンといえども、小型偵察型・自爆型とは違って、高度1万メートル前後を飛び、最大40時間近くも滞空できます。アメリカのMQ-9リーパー、グローバル・ホークに近く、それらのヨーロッパ版です。
ただ、MQ-9と比べてひと回り大きく、約2倍の重さになりましたが、これはドイツが安全性を考えて、単発エンジンではなく、双発エンジンを求めたから。
双発エンジンにすれば、たとえ片方が停止しても、もう片方で帰還できるため、墜落事故の可能性は減り、全体の安全性は高まります。
また、各国がいろんな要求を持ち寄り、搭載能力・航続距離に反映したところ、欲張りな機体に仕上がりました。大きさはグローバル・ホークに近いものの、情報収集と警戒監視だけではなく、対地攻撃任務にも使えるなど、事実上の無人攻撃機になりました。
大西洋と地中海での警戒はもちろん、黒海やバルト海でロシアと対峙する際、最低限の自衛能力が欠かせず、ブリムストーン・ミサイルなど、最大2,300kgの兵装を搭載できます。
計画遅延とコスト増
一方、機体の肥大化は開発の複雑化を招き、4カ国間の調整をさらに難しくします。ここに新型コロナウイルスの影響、世界的なインフレが重なり、計画は大きく遅延しました。
その結果、始動から10年以上が経っても、ユーロドローンは飛んでおらず、初飛行は2027年中頃の予定です。運用開始も本来の2025年ではなく、現状では2031年までズレ込み、せっかくの評価を下げてきました。
計画は大幅に遅れている
されど、調達コストの高騰は止まらず、1機あたり200億円を超えてしまい、ここに初期の設備投資、年間の整備費を合わせると、グローバルホーク並みの金食い虫になります。
ドイツの21機を筆頭にイタリアが15機、フランスとスペインがそれぞれ12機を買うものの、これだけ調達・運用コストが高くなると、他国への輸出も難しいでしょう。
同じMALE機を買うにしても、ユーロドローン1機分の金額を出せば、トルコの「バイラクタル」が20機以上も買えますから。
本来、4カ国が共同で資金を出し合い、開発リスクを分散しながら、欧州独自の技術を育てるはずでした。そのためにエアバス、ダッソー、レオナルドなど、欧州屈指の航空企業が手を組み、ヨーロッパの自立・自律を目指しました。
ところが、計画の遅延とコスト高騰に遭い、同じ欧州・NATOの国であっても、ユーロドローンを使うか微妙な状況です。
海上自衛隊が導入するかも
輸出に向けた雲行きが怪しいなか、日本がオブザーバーとして加わり、知見や技術の取得を目指しています。
しかも、防衛省の参加に続くように、川崎重工業がエアバスと覚書を結び、ドローン開発での提携を発表しました。
発表された構想によると、ユーロドローンをベースにしながら、川崎重工の対潜監視システムを積み、海上自衛隊向けに提案するようです。
川崎重工といえば、P-1哨戒機を開発・製造しており、海自の対潜能力を支えてきました。すなわち、ユーロドローンの監視・搭載能力と航続距離、川崎重工の対潜技術を合わせるわけです。
海自はMQ-9リーパーの派生型、航空自衛隊はグローバル・ホークを使い、それぞれ警戒監視にあたらせるも、対潜システムと兵装の搭載を考えると、ユーロドローンの積載能力は役立ち、滞空能力も問題ありません。
イメージ図
日本は世界有数の海洋面積を誇り、中国潜水艦の動きを抑えるならば、現行の有人哨戒機だけでは足りず、ドローンを活用せねばなりません。
さはさりながら、コスト高騰という難点は変わらず、いくら防衛費が増額されても、200億円の機体を易々とは買えません。
特にグローバル・ホークの一件があるだけに、これ以上の金食い虫を買う余裕はなく、費用対効果の見極めが重要です。
戦略的自立性の象徴
それでも、日本と欧州が兵器開発で組み、ともに対米依存度を下げる、リスク分散を図るのは賛成です。
トランプ政権が発足して以降、アメリカは自由主義陣営の盟主、同盟国としての信用を失い、特にNATOと欧州の不信感を与えました。
日本は欧州・NATO諸国と違って、安全保障面で頼れる周辺国が少なく、戦略的自律性にも限界があります。
ただ、現在のアメリカが当てにならない限り、同志国と連携を強化するほかなく、この点では欧州と利害が一致してきました。
だからこそ、最近の日欧関係の発展はめざましく、ユーロドローンを巡る連携、共同開発もその一環にすぎません。
ユーロドローンの開発は円滑とはいえず、さまざまな問題に直面したとはいえ、それは単なる無人機ではなく、欧州の自立・自律という政治的重要性を含み、対米依存からの脱却姿勢を表したものです。


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