高い命中率の英国産対地ミサイル
2022年に始まったロシア=ウクライナ戦争では、当初の予想に反してロシア軍の苦戦が目立ちます。
特に、自慢の戦車を2,000両近くも喪失する事態となり、多くの熟練戦車兵を含む戦死者を合わせると、ロシアにおける第1線級の陸軍戦力は壊滅しました。
この戦車の大量喪失をもたらしたのはウクライナ軍の善戦ですが、それを支えたのが西側から供与された数多の対戦車兵器です。
そのなかでアメリカのジャベリン・ミサイルが一躍脚光を浴びたものの、イギリスが提供したNLAW対戦車ミサイルもロシア戦車の撃破にかなり貢献しました。
欧州勢の中ではウクライナ支援に熱心なイギリスですが、今回も新たな対装甲火力として「ブリムストーン2」と呼ばれる対地ミサイルを供与したことが判明しました。
⚪︎基本性能:ブリムストーン2
重 量 | 52.7kg |
直 径 | 0.18m |
全 長 | 1.8m |
速 度 | マッハ1.3(時速1,600km) |
射 程 | 40km〜60km |
価 格 | 1発あたり約2,700万円 |
あまり聞きなれないブリムストーン・ミサイルはイギリスが1990年代後半に開発した空対地ミサイルで、ユーロファイター・タイフーンや攻撃ヘリによる対戦車攻撃を想定して作られました。
ブリムストーンはレーザー誘導とミサイル自身のレーダーを使った自律誘導(撃ちっ放し)の2つのモードがあり、前者は固定目標に対して、後者は動く目標への精密攻撃に使われます。
民間人の巻き添えを避けるうえでも命中精度は特に重視されていますが、本ミサイルはアフガニスタンやリビアでの軍事作戦に数百発投入された結果、命中率95%という数値を叩き出しました。
弾頭にはジャベリンと同じ二段構えの成形炸薬弾を採用していますが、これは戦車の装甲に当たると弾頭内部の金属が高温高圧の塊に変化して装甲を貫くタイプです。
そして、このタイプの弾頭は旧ソ連製戦車でよく見られる爆発反応装甲に対しても有効なので現代のロシア戦車を含むあらゆる装甲車両を撃破できる威力を持ちます。
移動目標も攻撃できる改良型
今回ウクライナに供与された改良型のブリムストーン2は射程が従来の12kmから40km以上まで延伸されたほか、センサー類のアップグレードによって高速目標への対処能力が格段に上がりました。
その性能は発射試験のおいて時速100km超で走る車両に問題なく命中したほどで、水上の小型高速艇への攻撃にも応用される予定です。
このように高速目標も撃破でき、既存の装甲をほぼ全て貫けると宣伝されているブリムストーン2ですが、現在は地上から発射できるタイプのブリムストーン3が開発されています。
イギリス自慢の対地ミサイル・ブリムストーンは前述のようにウクライナにも提供されたものの、現地では本来の空対地ではなく、トラックの荷台に載せた地上発射型に応急改良して使っているようです。
これら地上発射型は航空機からの発射と比べて射程が劣るものの、供与されてすぐに数両のロシア戦車を撃破しているので、命中精度は特に問題ありません。ブリムストーン2も供与されていて、N-LAWとともにウクライナ軍の善戦を支えるイギリス兵器の代表になりそうです。
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