優秀すぎて後継いらず?ブローニングM2重機関銃のスゴさ

M2重機関銃 アメリカ
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最初から完成された傑作

スマホをはじめとする製品は、あとから登場したものが本来は優れた性能を持つものです。しかし、軍事分野では意外にも「古い兵器」の方が好まれるケースがあります。

その代表例がアメリカを筆頭に世界中で使われている「ブローニングM2重機関銃」です。

⚪︎基本性能:ブローニングM2重機関銃

重 量 本 体:38kg
三脚付:58kg
全 長 1.645m
口 径 12.7mm
装 弾 ベルト給弾式
発射速度 400〜750発/分
有効射程 1,800〜2,000m
価 格 約550万円(自衛隊向け)

「ブローニングM2」は機関銃が猛威を振るった第一次世界大戦の教訓を受けて作られたもので、銃器設計者として優れていたジョン・ブローニング氏が手がけました。

原型となった重機関銃が1921年に登場した後、問題点を改良して1933年に正式採用されて今日まで使われ続けています。大口径の12.7mm弾を採用したおかげで高い威力を持ち、地上戦での対人・対車両攻撃はもちろん、対水上や対地、対空射撃もできる優れものです。

M2による対空射撃訓練(出典:陸上自衛隊)

よって、西側諸国の軍隊では装甲車や戦車、ヘリコプター、水上艦船などのあらゆる場所に搭載していて、最も馴染みのある機関銃となりました。

このM2の射撃は引き金ではなく「逆Y字型」のトリガーを親指で押す方式となっており、ベルト給弾を使った連続射撃が可能です。地上設置型は射手と給弾係の2名体制ですが、車両や航空機、艦船に搭載したものでは単独運用が多くなります。

発射速度は毎分400〜750発となっているものの、銃身加熱を考慮して実際は5〜10発のバースト射撃を繰り返すそうです。それでも、長時間にわたって射撃できる支援火力として重宝されてきました。

M2の特徴である押して撃つトリガー(出典:アメリカ軍)

あえて欠点を指摘するならば「重量」ですが、長時間射撃に耐えられる重い銃身はむしろ反動を抑え、高い安定性と命中率をもたらしました。しかも、重機関銃としては発射速度が比較的遅く、射程も長いことから長距離狙撃でも戦果を挙げています。

さらに、簡易な構造のおかげで動作不良が起こりづらく、整備性も優れているので、現場からはこれ以上ない信頼性を獲得しています。とりあえず潤滑油を差しておけば使えるという整備性の良さは、細かい作業を行う余裕のない戦場では愛される要因です。

こうした抜群の安定性、信頼性、そして完成度の高さによって300万以上が生産されて、現在も世界中で100カ国近くが使っています。

日本でも自衛隊と海上保安庁で導入済みで、1985年からは住友重機械工業がライセンス生産しています。もちろん、今も絶賛調達中ですが、この住友製M2は本家と違って現場からの評判が悪く、特に動作不良を起こしやすいとのことです。

まだ全然使える「老兵」

すでに採用から90年以上も経っているにもかかわらず、未だに余裕で現役のM2重機関銃は今まで後継開発が何度か試みられています。しかし、どれも総合性能や費用対効果でM2には敵わず、最終的に「ボツ」になりました。

実のところ、M2よりも優れた重機関銃を作ろうと思えば、作れるのは事実です。例えば、アメリカが2009年に開発した「XM806」は射撃時の反動をM2と比べて60%も減らしました。また、本体だけで38kgもあるM2に対して、中国が開発した「17-1式重機関銃」は同じ12.7mm機関銃でありながらたったの「10.8kg」です(三脚を入れても17kg程度)。

このように現代の技術・素材を使えば、M2よりも軽くて高性能な重機関銃は開発可能といえます。しかし、今あるM2でも「十分以上」に使えるので、わざわざコストをかけてまで新しいのを開発する理由が低いといえます。

しかも、世界中で300万挺以上も出回っているせいで更新が難しく、無理に開発してNATO諸国の間で混在させるよりも、現状の互換性を保った方がいい点も否めません。

射撃するM2重機関銃(出典:アメリカ軍)

結局のところ、最初から設計的に完成されていたM2を超えられなかったわけですが、アメリカではまたしても新型重機関銃の開発が始まりました。それでも、信頼性や耐久性、整備性のような総合性能でM2に勝てるかは怪しく、再び開発中止となってもおかしくありません。

現状でもM2重機関銃は十分以上に使えるほか、遠隔操作式に改良するなど現代戦に合わせた取り組みもみられます。少なくとも、B-52爆撃機と同じ「100年選手」になるのは確定です。

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