ほぼロケット?エクスカリバー誘導砲弾のスゴい性能とは

誘導砲弾のイラスト アメリカ
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榴弾砲から撃つGPS誘導弾

砲兵戦といえば、複雑な計算と弾着観測に基づく軌道修正のイメージがありますが、現代は砲弾自体が誘導機能を持ち、精密な砲撃が可能になりました。

その代表例といえるのが、「エクスカリバー」という誘導砲弾ですが、これはアメリカとスウェーデンが共同開発したものです。

イラクやアフガニスタンで多用されたほか、ロシアと激しい砲兵戦を繰り広げるウクライナにも供与されました。

  • 基本性能:M982 エクスカリバー誘導砲弾
重 量 48kg
全 長 99.6cm
直 径 155mm
射 程 約40〜50km
価 格 1発あたり約1,200万円

この特殊砲弾はGPS誘導機能を使いながら、自ら弾着地点を修正することにより、平均誤差「2m以内」という命中精度を実現しました。これは榴弾砲に求める精度としては十分なうえ、誤射のリスクも大きく減ったため、味方に対する近接火力支援も行いやすくなりました。

発射後は小型翼を展開しながら、最大40kmの距離を滑空しますが、実際にはアーチャー自走砲(スウェーデン)が50km超えに成功しています。また、アメリカが開発中の「M1299」にいたっては、なんと70kmという距離を叩き出しました。

このように長射程と精密誘導と組み合わせたところ、エクスカリバーは砲弾でありながら、約40km先のトラックに命中する性能を手に入れました。

その実態はもはや誘導ロケット弾にあたり、2007年にイラクで実戦投入されて以降、市街戦での近接火力支援のみならず、山岳地帯での長距離砲撃にも役立ってきました。

コストに見合う戦果はある

エクスカリバーは砲弾としては高性能ながらも、 その代償としてコスト問題からは逃れられず、1発あたりの値段は約1,200万円といわれています(通常弾は約30万円)。

したがって、通常弾のように大量消費するのではなく、戦車や自走砲、前線司令部などの「高価値目標」を狙って費用対効果を上げるわけです。また、同じ目標を破壊するにしても、通常より少ない弾数で済めば、射撃時間の短縮と兵站への負担軽減につながります。

使い方次第ではコスト分の戦果は期待できるため、開発国以外でもカナダやオランダ、オーストラリアなどで採用されました。

こうしたなか、ウクライナにM777榴弾砲とともに提供されたところ、持ち前の誘導性能を活かして、ロシア軍の戦車や砲兵陣地を多く破壊しました。

一方、GPS誘導に頼る以上、電波妨害を受けると精度が低くなり、ロシア軍の電子戦により、一時期は命中率が6%台まで下がりました。

電波妨害への耐性を高めた新型砲弾があるとはいえ、こちらはさらにコストが高くなってしまいます。

ちなみに、陸上自衛隊も西側標準の155mm榴弾砲を運用しており、エクスカリバー砲弾も理論上は使用可能です。しかし、島嶼防衛では大規模な砲兵戦は起きづらく、ミサイル戦力の強化が急がれるなかで、1発1,200万超えの砲弾を買う優先度は低いといえます。

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