敵を欺くデコイミサイル・ADM160B MALDとは?

戦闘機とそれに搭載されたミサイル アメリカ
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囮を作る欺瞞兵器

相手をダマすのは軍事における常套手段ですが、アメリカにはこの働きを担う特殊なミサイル「ADM160 MALD」というのがあります。

MALDは「Miniature Air-Launched Decoy(小型空中発射型デコイ)」の略称で、相手レーダーに擬似反応をつくり出せる欺瞞兵器です。

  • 基本性能:ADM160B MALD
重 量 115kg
全 長 2.84m
直 径 0.41m
速 度 マッハ0.9(時速1,100km)
射 程 約930km
高 度 12,200m
価 格 1発あたり約5,000万円

MALDはあのトマホーク巡航ミサイルを担当した米・レイセヨン社が1990年代に開発したデコイ・ミサイルで、電子能力を使って空中目標の幻影をつくり、敵防空網を撹乱します。

特筆すべきは真似られる航空機の種類であり、通常の戦闘機からB-52爆撃機のような大型機まで対応しています。こうした存在しない目標を映し出すことで、相手を混乱に陥れ、防空ミサイルをムダに消費させるとともに、その間に本当の航空攻撃を行うわけです。

しかも、MALD自体はF-15からF35までの各戦闘機に加えて、爆撃機や哨戒機、無人攻撃機などあらゆる航空機から発射できます。発射後はGPSアシストを使いながら事前設定されたルートを飛びますが、この飛行コースは途中で変更可能です。

改良型と実戦投入

2000年代には初期型(ADM160A)から射程距離・滞空時間を伸ばした「ADM160B」が開発されて1,500発近くが米空軍に納入されました。

しかし、このB型も2012年には新規調達が終わり、現在は電波妨害機能も備えたジャミング・タイプ「MALD-J」に移行しました。レイセヨン社は低空飛行能力やデータリンク機能を強化した「MALD-X」にも取り組んでおり、米海軍のF/A-18戦闘機向けに「MALD-N」も検討しています。

MALDを準備する様子(出典:アメリカ空軍)

MALDはほかと比べてほとんど表舞台には出てこず、いまだ謎多きミサイルとなっています。

そんなMALDはウクライナ軍による攻撃跡で残骸が見つかり、密かに供与されていたのが明らかになりました。イギリスから提供されたストーム・シャドウ巡航ミサイルを使うときに、合わせて発射したものと思われます。

ロシア側が防空体制を敷いているにもかかわらず、ストーム・シャドウはクリミア半島で大きな戦果をあげてきましたが、その裏には幻影を映し出すMALDの存在があったわけです。

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