ストームシャドウ・ミサイルの威力がもたらす影響

英仏が作った巡航ミサイル

ロシア＝ウクライナ戦争では西側諸国からウクライナに対して多くの軍事支援が行われ、ジャベリン対戦車ミサイルなどの携行式火器から始まった供与も、今では自走榴弾砲や防空ミサイル、主力戦車にまで拡充されました。

そして、ウクライナ側がこれら供与兵器で十分な戦果をあげると支援内容が「次」のレベルに格上げされるわけですが、それでもゼレンスキー大統領が求めてきたF-16戦闘機や長距離打撃ミサイルには長らく慎重な姿勢を崩しませんでした。

これはアメリカやドイツ、フランスなどが戦争のエスカレートを懸念してロシアに対する過度な刺激を避けているからであり、いわばNATOを中心とする西側諸国がロシアの恫喝に「抑止」されている状態といえます。

一方、同じNATOでもイギリスやポーランド、バルト3国はロシア軍を叩き潰す姿勢を示していて、特にイギリスはチャレンジャー2戦車を引き渡して戦車供与の流れを作り、本命だったレオパルト2戦車につなげました。

そんな積極姿勢のイギリスは長距離ミサイルに関しても「ストーム・シャドウ」という空対地巡航ミサイルを提供していて、軍事支援の壁に再び風穴を開けた形です。

⚪︎基本性能：SCALP-EG/ストーム・シャドウ巡航ミサイル

1990年代に英仏が共同開発したストーム・シャドウは航空機から発射される対地ミサイルで、探知回避のために低空飛行しながらGPS誘導または赤外線画像を使って目標に向かいます。

成形炸薬弾と徹甲榴弾を組み合わせた弾頭は貫通効果が高く、厚さ5mの鋼鉄をも貫ける一段目で目標を貫いた後、遅れて起動する二段目で追い打ちをかける仕組みです。こうした二重構造の弾頭は、地上司令部のような堅牢な建物への精密攻撃に適していて、水上艦船に対しては致命的損害を与えられます。

イギリスでは主にタイフーン戦闘機、フランスではラファール戦闘機などで運用されており、イラク戦争やイスラム国への空爆作戦で使われた実績があるので、その信頼性は特に問題ありません。

しかし、見た目こそ航空自衛隊も導入するJASSMミサイルに似ているものの、最新のF-35ステルス戦闘機には残念ながら搭載できません。

よって、F-35戦闘機に移行しているイギリスはストーム・シャドウを放出する余裕があり、仮想敵のロシアと戦うウクライナに供与するのは「国益」にも合致します。