ストームシャドウ・ミサイルの威力がもたらす影響

戦闘機に搭載されたミサイル 外国関連
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攻撃範囲の飛躍的な拡大

一方、HIMARS高機動ロケット砲で運用できるATACMSミサイル(射程300km)を要望してきたウクライナにとって最低でも250km先を狙えるストーム・シャドウは「渡りに船」といえる存在です。

ここで注意したいのが、250kmという射程距離はあくまで「輸出版」のことであって、イギリス自身が運用しているのは最大550km以上とされています。

今回供与されたのがどちらなのかは不明ですが、いずれにせよHIMARSでは最大80km先しか攻撃できず、アメリカがATACMSの代わりに約束したGLSDB弾も射程150kmほどである点を考えると、ウクライナの長距離打撃力が飛躍的に向上しました。

ストーム・シャドウを搭載したタイフーン戦闘機(出典:イギリス空軍)

では、ストーム・シャドウはどのように使われ、どのような影響をもたらすのか?

まず、欧米がこうした長射程兵器の供与を渋る理由はロシア領への直接攻撃に使われる懸念があるからなのですが、今回の供与もロシア本国への攻撃には使用しない約束があってこそ実現しました。

したがって、ウクライナ側は今後の支援を引き出すためにも約束を守りつつ、被占領地域におけるロシア軍の後方拠点を叩いて戦果と運用能力を示すでしょう。

HIMARSに後方拠点を狙われたロシア軍は、弾薬庫や司令部などをさらに奥地に移したため、ストーム・シャドウは再びこうした重要拠点を狙い撃ちできます。

例えば、前線から100km以上も離れたクリミア半島の黒海艦隊司令部に命中したり、停泊中の揚陸艦や潜水艦の破壊に成功しました。

今まで射程圏外で安心していたロシア軍は逃げ場を失い、戦略的に重要なセヴァストポリ海軍基地も安全でなくなった結果、黒海艦隊はついにクリミア半島から事実上撤退しました。それは黒海の制海権確保を諦めたのみならず、2014年のクリミア併合がその意義を失ったことを意味します。

さらに、イギリスのストーム・シャドウ供与に最も期待されるのは「他国が続くきっかけ」になる点です。

主力戦車のときのようにイギリスが「最初のペンギン」となり、様子見しているアメリカが本命・ATACMSを供与する導火線になるかもしれません。こうした意味でもストーム・シャドウは戦局を左右しかねず、決断したイギリスの功績は大きいのです。

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