対中国の最前線、海上保安庁の尖閣領海警備専従部隊とは?

尖閣諸島沖を航行する海上保安庁の巡視船 海上保安庁
この記事は約3分で読めます。

新型船を集中配備

尖閣諸島沖に毎日のように中国公船が出現するなか、これを24時間体制で監視・警戒しているのが海上保安庁の巡視船です。

こうした対峙は中国漁船衝突事件(2010年)から絶え間なく続くようになり、もともと数で不利な海保にとっては大きな負担となりました。

そこで、ひとつの解決案として発足したのが「尖閣領海警備専従部隊」です。これは尖閣警備を担当する12隻の専門部隊で、2013年から約3年かけて編成されました。

このとき、長期間にわたる中国船とのにらみ合いを想定して、ヘリコプターを載せられる貴重な大型巡視船を2隻も配備したほか、新たに1,000トン級の巡視船も建造しています。

海上保安庁の尖閣警備体制を説明した図尖閣専従体制の説明図(出典:海上保安庁)

大型巡視船を沖縄本島に置き、尖閣最寄りの石垣島には新型巡視船を集中配備するなか、船の稼働率を高めるために「クルー制」も導入しました。

どういうことかと言えば、従来は巡視船ごとに乗組員が固定されていたところ、尖閣専従部隊では3隻の巡視船に4つのクルーを用意しています。

この仕組みを使えば、ひとつのクルーを休ませながら、別クルーで巡視船を動かせるわけですが、おかげで尖閣専従部隊は12隻・550人体制でありながら、14隻分の働きができるそうです。

それでも危ういわけ

こうして尖閣専従部隊を作り上げた海保は、近くの宮古島にも小型巡視船9隻と監視用のジェット機を3機を集めて「支援体制」を強化しました。

宮古島の巡視船は主に中国漁船への対策であって、その分だけ石垣島の巡視船が中国公船に専念できる形です。一方、ジェット機は上空からの警戒監視を行うためのもので、海上の尖閣専従部隊とともに、24時間の警備体制を実現しました。

ほかにも、3〜4隻の巡視船が別に控えており、いざという時は尖閣方面にも投入できるようになっています。

海上保安庁の巡視船と中国公船海保と中国海警局のにらみ合い(出典:海上保安庁)

ただ、こうした増強にもかかわらず、現状はなんとか対抗できているにすぎず、戦力という意味では中国側はまだ余力があります。

いまのところ、中国公船の数は3〜4隻にとどまっていますが、これは日本の反応を見ながら段階的に引き上げてきた結果です。相手に圧力を加える外交カードのひとつになっていて、その数は必要に応じてさらに増やせます。

すなわち、現時点では中国側がこれ以上の対立激化を控えているだけで、やろうと思えば、一度に10隻以上を派遣したり、大量の中国漁船を出現させられるでしょう。

尖閣専従体制を築いたといえども、その実態は決して「安泰」とはいえません。そもそも数では勝負にならないのを理解したうえで、海保のさらなる増強を図りながら、どうにか現状維持に努めるしかありません。

海保の象徴!巡視船「しきしま」の武装とその意外な任務
核燃料護衛用の大型巡視船 四方を海に囲まれた日本は領海と排他的経済水域を合わせると世界6位の海洋面積を有しますが、この広大な海の安全を日頃...

コメント

タイトルとURLをコピーしました