整地から陣地構築までこなす戦闘工兵車
土地整備や陣地構築などの活動が多い陸上自衛隊は施設科(工兵部隊)を各地に配備して戦闘部隊を支援する体制を築いていますが、こうした工兵部隊に欠かせないのが特殊装備の数々であり、そのひとつが「ドーザ」と呼ばれる装甲ブルドーザーです。
戦闘を意識して装甲化された陸自ブルドーザーにはいくつか種類があるものの、今回は比較的新しい「施設作業車」と開発予定の「ドーザ(装甲付き)」について紹介します。
⚪︎基本性能:施設作業車・ドーザ(装甲付き)
施設作業車 | ドーザ(装甲付き) | |
重 量 | 28.6t | 26t |
全 長 | 8.88m | 8.0m |
全 幅 | 3.77m | 3.6m |
全 高 | 2.77m | 3.3m |
乗 員 | 2名 | 2名? |
速 度 | 時速50km | 不明 |
行動距離 | 約300km | 不明 |
価 格 | 約4億円 | 約5.6億円 |
建設機械で知られる小松製作所が開発した施設作業車は土壌や障害物をどかすドーザブレードに加えて、ショベルアームも備えることでブルドーザーとショベルカーを掛け合わせたような形となりました。
そのため、1両で整地作業から陣地構築までこなせるうえ、ショベルアームはあらかじめ作業手順を入力しておけば、コンピューター制御と各種センサーを使った自動掘削も可能です。
土木作業車なので武装はありませんが、小銃弾や砲弾の破片に耐えられるレベルの装甲によって乗員は守られた車内から作業を行えます。
ほかにも、対戦車ミサイルの検知器や発煙弾発射機、障害物撤去用の爆薬を格納するスペースが設けられているなど、戦闘下での作業を想定した戦闘工兵車らしい特徴が見られます。
作業効率を向上させた施設作業車は演習場の整備や塹壕掘りで重宝されている一方で、単価が高騰したことで第7師団など一部にしか配備されておらず、ほかの部隊は老朽化した75式ドーザを未だに使っているのが現状。
こうした状況を受けて、本来は施設作業車が置き換える予定だった75式ドーザの後継として「ドーザ(装甲付き)」が新たに開発されました。
新型ドーザ(装甲付き)の行方
日立製作所が担当するドーザ(装甲付き)は75式ドーザよりも防護力と機動性を高めつつ、施設作業車に劣らない作業能力を目指すわけですが、肝心の単価については1両あたり5.6億円と施設作業車よりも高くなる見通しです。
一応、防衛費増額を追い風にして30両の調達が予定されているものの、これ以上コストが高騰したら施設作業車の二の舞になりかねず、配備が滞りなく進むかは不透明といえます。
戦車や自走砲と比べてどうしても「地味」な戦闘工兵車は、実は最前線で戦闘部隊の進軍を支える重責を担い、燃料車や架橋装備とともに施設科が本領発揮するための必須アイテムなのです。
また、ここで過去の教訓を引用すると、太平洋戦争の転換点ともいわれるガダルカナル島の戦いは工兵視点で見たら、ツルハシやスコップを中心とした日本軍とブルドーザーなどの重機を多数投入したアメリカ軍の戦いでもありました。
したがって、陸自の施設科とその装備の充実は極めて重要で、新型ドーザ(装甲付き)も中途半端な結果となってはいけません。
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