英豪印も導入したアメリカの最新哨戒機
広大な海のパトロールには上空から監視する哨戒機が必須で、特に四方を海に囲まれた日本は太平洋戦争の教訓から戦後は対潜哨戒機の運用に注力してきました。日本の海上自衛隊はアメリカ製のP-3C哨戒機を100機近く導入してソ連潜水艦を見つける「対潜の鬼」と化したのは有名な話ですが、そんなP-3Cの後継機として登場したのがアメリカの最新哨戒機「P-8ポセイドン」です。日本も一時はこのP-8哨戒機の採用を検討したものの、結局は独自開発した国産のP-1哨戒機を選択したのでP-8はしばしばP-1のライバルと認識されることがあります。
⚪︎基本性能:P-8哨戒機
全 長 | 38.6m |
全 幅 | 35.8m |
全 高 | 12.8m |
乗 員 | 乗員9名 |
速 度 | 最大時速907km |
航続距離 | 約7,500km |
高 度 | 約12,500m |
兵 装 | 対潜魚雷、対潜爆弾 ハープーン対艦ミサイル |
価 格 | 1機あたり約160億円 |
旅客機のボーイング737をベースに開発されたP-8ポセイドンは新型の対潜ソナーや対水上レーダーを搭載することで従来機より探知・監視能力を大幅に高めましたが、P-3Cと比べた場合、特に投下式の小型ソナー「ソノブイ」の搭載数が84本から129本に増強されたうえ、自動再装填および投下が可能となりました。こうした改良点に加えて、操縦性の向上と任務に応じた各種兵器の搭載、空中給油機能を用いた航続距離の延伸など、哨戒任務を遂行するために欠かせない堅実な能力を備えています。
一方、メイン顧客である米海軍向けのP-8哨戒機(P-8A)は最初から無人機との連携を視野に入れており、特に低高度からの哨戒はMQ-4Cトライトン無人機に任せるつもりのため、P-8Aは潜水艦の磁気がもたらす磁場の乱れを捉える磁気探知機(MAD)を搭載していません。こうした無人機との連携を前提とした運用思想やMADを装備してないことが海自のP-1哨戒機との相違点といえますが、設計上は機体尾部へのMAD搭載が可能なのでインドに輸出されたタイプ(P-8I ネプチューン)は要求に応じて装備されています。

さて、2013年から運用が始まったP-8はアメリカ以外にもイギリス、オーストラリアなどの同盟国、そしてロシア兵器購入のお得意様であるインドも導入することで現時点で155機以上が製造されました。P-8哨戒機は高価な調達コストと無人機との連携という運用前提によって輸出が振るわないと懸念されていたものの、量産効果で単価が当初の200億円から160億円台まで下がったこと、そして電子機器を含めた一定の改造に対する許可や相手国の要求に応じることで結果的に7カ国での採用という堅調な成績を残しました。
スペック上は日本のP-1哨戒機も決して負けておらず、磁気探知機を装備している点などでは哨戒機単体として優れていますが、輸出実績の無さと量産コストの低減が見込めないことが足かせとなって輸出面ではP-8に敗北を喫しています。ただ、最初から無人機との運用を見据えたうえ、将来的には無人潜水機との連携も目指しているP-8哨戒機は海自のP-1哨戒機とはそもそも「似て非なる存在」といえるでしょう。
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