いいとこ取り?C-17輸送機

アメリカ軍

長距離空輸と短距離離着陸を兼ね備えた機体

世界最強・アメリカ軍の強さの秘訣として、一つはその圧倒的な「空輸力」が挙げられますが、この能力をC-130輸送機とともに大きく支えているのがC-17輸送機、通称「グローブマスター」になります。M1A2エイブラムス戦車からブラッドレー歩兵戦闘車に至るまで全ての装甲車両を運べるこの機体は、戦闘地域を含めた世界中に展開する米軍にとっては欠かせない輸送機です。

⚪︎基本性能:C-17輸送機

全 長53m
全 幅51.75m
全 高16.8m
乗 員3名
速 度時速830km
航続距離約4,500km
※空荷の場合は約10,000km
高 度14,000m
輸送能力最大77.5トン
・兵員:102名
  もしくは
・車両:M1A2×1両など
兵 装ミサイル警報装置
チャフ・フレア射出装置
価 格1機あたり約300〜350億円

1993年から運用開始されたC-17輸送機の輸送能力は米軍最大のC-5輸送機にこそ及ばないものの、その約65%に匹敵する77.5トンの搭載量を誇ります。これはC-130輸送機のおよそ3.5倍、航空自衛隊のC-2輸送機の倍以上でありながら長い航続距離を有するので、より遠方までより多くの装備や物資を運べるのです。

輸送力の例をいくつか挙げると、まず兵員であれば102人が着座して搭乗できますが、通常の兵員輸送以外にも空挺兵のパラシュート降下で用いられます。ちなみに、2021年のアフガニスタン撤退作戦では殺到した避難民を機内に詰め込んだ結果、とあるC17輸送機では記録破りの823人が脱出することに成功しました。

続いて装備に関してですが、主力戦車のエイブラムスであれば丸ごと1両、ブラッドレー歩兵戦闘車は2両、迅速展開で用いられるストライカー装甲車は最大3両を搭載可能です。他にも、どの戦場でも重宝されるハンヴィー高機動車や軍用トラック、火力支援に欠かせない各種火砲のほか、CH-47チヌークのようなヘリコプターもローターを折り畳めば貨物室に収まります。

空挺兵が搭乗した機内(左)とUH-60ヘリを載せる様子(右)(出典:アメリカ空軍、筆者加工)

車両からヘリまで収容するC-17輸送機は大きさの割には離着陸に要する滑走路の長さは900〜1,000m程度と短く、舗装されていない滑走路にも降りられることから活用できる空港・飛行場の選択肢が多いといえます。これは戦力投射を行う際の大きな利点であり、長距離空輸能力と合わせて中東地域やアフガニスタンに展開した米軍にとっては必要不可欠な要素でした。

この長距離空輸能力と短距離離着陸能力を兼ね備えた大型輸送機をアメリカは222機も運用しており、2003年のイラク戦争や前述のアフガニスタン撤退作戦に多数投入したほか、南極観測隊への補給や大統領専用車の空輸にも使っています。また、アメリカ以外にもイギリスやオーストラリア、インドなど7カ国が購入していますが、実は日本も一時期はC-1輸送機の後継候補として検討したことがありました。結局、最高速度や短距離離着陸の性能が要求を満たさないとして導入を見送り、これらの点で優る国産のC-2輸送機を採用しました。

米空軍における輸送部隊の主力を担い、輸出面でも一定の成功を収めたC-17輸送機は当面の間は現役を続けますが、既に生産ラインが閉鎖されてしまったので、今後は適宜改修しながらの運用となるでしょう。そんな中、中国を念頭に置いた新たな運用法として、輸送機からパラシュート付きのパレットコンテナに収めたミサイルを投下して発射するというものが検討されています。これは中国軍の射程圏外からJASSM-ERミサイルを放って打撃を与える構想に基づいていますが、この場合は1機のC-17に最大45発ものJASSMミサイルが搭載できます。

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