「A29」スーパーツカノのようなCOIN軽攻撃機の役割

戦闘機
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対叛乱・対テロ戦用のレシプロ機

超音速を飛行するジェット機やレーダーに映りにくいステルス機が主流の中、これにあえて逆行する低速のレシプロ機を導入することがあります。

「COIN機」と呼ばれるこの軽攻撃機は、ゲリラやテロリストなど非正規軍を相手にする任務上、低速で安価なのが特徴であり、わざわざ高価なジェット戦闘機を投入しなくていい場面で重宝されます。

「Counter Insurgency(対叛乱)」の略称である「COIN」は、主に反政府勢力の存在に苦しむ政府側が治安維持を目的に用いる軍事作戦ですが、経済的余裕が少ない発展途上国が舞台となることが多く、あまり高価な装備を投入できません。

したがって、最新鋭の戦闘機よりも低予算と練度の低いパイロットでも運用可能なCOIN機が好まれ、東南アジアや中南米を中心に反政府組織と麻薬組織の掃討で活躍してきました。

そもそも、COIN機は防空能力をほぼ持たない非正規軍を想定しているため、低スペックかつ安価な練習機を改造するだけで十分ニーズに応えることができます。

「軽攻撃機」という名称からも分かるように、COIN機は基本的に高性能なレーダーやコンピューターは搭載しておらず、武装も機銃や爆弾、ロケット弾などに限られています。

その分、発展途上国でも手が出せる値段となっていますが、対地攻撃もこなせて比較的安い部類に入るF-16戦闘機が90億円するのに対して、COIN機の価格帯は20〜30億円だそうです。

また、地上のゲリラ兵や麻薬組織に対する攻撃には高性能なミサイルよりも単なる爆弾や機銃掃射でも十分であり、超音速の戦闘機は必要ないどころかオーバースペックすぎてむしろ使いづらいので、低速のレシプロ機の方が適任と言えるでしょう。

ただし、低速であるがゆえに、対空機関砲やスティンガーのような歩兵でも操れる携帯式地対空ミサイルには弱く、相手が一定の防空火器を持っている場合はCOIN機の利点が一気に災いします。

そのため、先進国ではCOIN機をわざわざ運用する国は少なく、仮にCOINが必要な場面に直面した際は攻撃ヘリや無人攻撃機を投入するでしょう。

本来、COIN機は内戦や政情不安で「余裕」がない国に向けた機種なのですが、世界一の航空戦力を誇るアメリカもベトナム戦争で「OV-10」というCOIN機を開発して使っていた歴史を持ち、アフガニスタンとイラクでの対テロ戦争を経験して今も改めてCOIN機の有効性に着目しています。

ベトナム戦争にも投入された米軍のCOIN機「OV-10A」(出典:アメリカ空軍)

例えば、山岳地帯の多いアフガニスタンでは、少人数のタリバン兵を空爆するためにF-15戦闘機のような高性能ジェット機やAH-64アパッチ攻撃ヘリを用いていましたが、費用対効果は非常に悪いと言わざるを得ません。

そこで、米軍もコスパの良いCOIN機に注目しましたが、アフガニスタン空軍向けに導入してパイロット育成を支援することで現地の同盟国が対タリバン戦で自立できることを期待しました。

要するに、対テロ戦を十分に遂行できるうえ、味方の能力と経済力に見合った武装を施したわけですが、残念ながらこのCOIN機提供はタリバンによるアフガニスタン制圧で失敗に終わりました。

このように対テロ戦で存在価値が高まったCOIN機ですが、一方で内戦発生のリスクがほとんどない日本にとっては必要ない装備といえます。

西南戦争を最後に内戦とは無縁な日本で自衛隊がわざわざCOIN機を導入する意味はなく、広大な海洋を監視するにはRQ-4Bグローバルホークのような無人機を用いればいいだけの話。

一方、日本が東南アジアなど他国のCOINを支援する意義はあります。中南米における麻薬組織の暗躍や中東でのテロ組織の存在は巡り巡って他地域にも悪影響を及ぼすので、先進諸国が地域安定のために現地政府を支援する意義は大きく、日本もインド太平洋を中心にCOINの支援はすべきでしょう。

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