2002年から調達開始
事実上の軍隊である以上、陸上自衛隊でも対人狙撃に取り組み、各地の普通科連隊に狙撃班を配置しています。ひとつの班は6名構成とはいえ、実際の行動では2人1組になり、狙撃と観測で役割分担する形です。
このとき、アメリカ製の「M24 SWS」を使い、遠くから重要標的を狙うわけですが、これは自衛隊内では「対人狙撃銃」と呼ばれています。M24自体は評判が高く、アメリカ軍は言うまでもなく、世界各国の軍隊や警察で採用されました。
その設計は老舗のレミントン社が担い、非常に安定した性能を誇るものの、ボルト・アクション式であることから、連続射撃と近接戦闘には向かず、あくまで待ち伏せ攻撃に使います。
- 基本性能:M24狙撃銃
重 量 | 4.4kg |
全 長 | 1.09m |
口 径 | 7.62mm |
弾 数 | 5発(改良型は10発) |
射 程 | 有効射程:約800m 最大射程:約1,500m |
価 格 | 1丁あたり約61万円 |
M24は1988年からあるとはいえ、自衛隊への導入は2002年と意外に遅く、それまでは64式小銃にスコープを取り付けて、なんとか狙撃銃として活用していました。
言いかえると、 M24以前の陸自は専用の狙撃銃がなく、他国と比べて射程と命中精度で劣り、せっかくの射撃能力を発揮できていませんでした。
さすがに装備の改善を図るべく、新型スコープとともに導入されており、これまでに1,300丁以上が調達されました。当初は特殊作戦群や第1空挺団、中央即応連隊など、エリート部隊に優先配備されていましたが、現在は全国の普通科連隊に行きわたり、いまや数百人の狙撃手がいます。
射撃成績に優れた者のうち、狙撃集合教育で基準を満たした場合のみ、狙撃の特殊技能資格を取得できます。そして、陸自では定期的に射撃競技会を行い、各人がその腕前を披露するなか、狙撃部門の成績優秀者は海外にも赴き、他国との競技会にも参加します。
以前はなかなか成果が出ず、他国より低い成績に悩んでいたところ、M24の普及率向上にともなって、海外競技会の成績も上がり始めました。いくら腕が確かでも、きちんとした装備がなければ、それは自然とハンデにつながり、競技会の成績はそれを表すといえるでしょう。
後継はドイツ製のG28
また、2020年には改良型の「M24 A2」の調達が始まり、最大装填数が10発に倍増したほか、ストックやレール部分が改造しやすくなり、個々人に合わせてアレンジできるようになりました。
そんななか、新しい対人狙撃銃の導入が決まり、ドイツ製の「H&K G28」になりました。これは現行のM24とは違って、最大20発装填のマガジンを使いながら、セミオートや連射できるもので、通常の小銃(アサルト・ライフル)に近いといえます。
M24は優れた狙撃銃とはいえ、前述のとおり即応性や連射能力を欠き、市街戦のような状況には向いていません。加えて、レミントン社は2018年に倒産になり、買収で存続となったものの、供給面では不安が残りました。
一方、G28は小銃タイプにもかかわらず、高い狙撃精度と信頼性を持ち、その有効射程は600m以上とされています。
小銃としても、狙撃銃としても使えるため、すでにドイツ軍とアメリカ軍で使われており、日本も専用スコープやグリップとともに、およそ900丁を調達予定です。
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