新型船で代替?海上保安庁の巡視船「そうや」の退役と後継

水上艦艇
この記事は約3分で読めます。

北方の守護神として

海上保安庁といえば、巡視船・巡視艇で海上警備を行い、最近は尖閣諸島周辺を守るべく、南西方面に新型船を集中投入しています。

これに対して、長らく北海道海域の守りを担い、「北方の守護神」と呼ばれてきたのが、艦齢47年のベテラン巡視船「そうや」です。

  • 基本性能:巡視船「そうや(2代目)」
排水量 約3,500t(基準)
全 長 98.6m
全 幅 15.6m
乗 員 71名
速 力 21ノット(時速39km)
航続距離 約10,500km
兵 装 40mm機関砲×1
砕氷能力 最大1.5m
艦載機 救難ヘリコプター×1

「そうや」は海保最古参の巡視船であるほか、南極観測船だった初代「宗谷」の後継になります。

初代「宗谷」は1962年に南極観測から退き、以後は砕氷船として能力を活かしながら、オホーツク海の警備を担当しました。戦力不足に悩む海保にとって、ヘリ甲板と砕氷能力を持ち、北方でソ連と対峙できる大型船は超貴重でした。

そんな初代の引退を受けて、海保は1978年に2代目「そうや」を造り、唯一の砕氷能力だけでなく、大型巡視船として初めてヘリ格納庫を備えました。

高い航空運用能力に加えて、数少ない大型巡視船であったことから、しばらくして船の番号が「PLH01」に変わり、1番船の栄光を与えられました。ちなみに、「PLH」はヘリコプター付きの大型巡視船という意味です。

巡視船「そうや」(出典:海上保安庁)

冬のオホーツク海で活動すべく、「そうや」は速力と砕氷能力の両立を図り、時速6kmで進みながら、大きな船体を海氷に乗り上げて、約1mの氷を連続砕氷できます。当時の砕氷船と比べると、これは能力的には高く、過去には流氷で孤立した船を救助しました。

さらに、荒れやすい北方海域に対応すべく、新しい減揺装置や安定機能を組み込み、船の耐久性を強化するとともに、ヘリ運用時の安定性を確保しています。

また、希少な大型巡視船である以上、大規模な任務では旗艦にならざるを得ず、指揮通信機能、情報収集能力を強化しました。限定的とはいえ、戦闘指揮所(CIC)に近い部屋を持ち、従来の巡視船とは一線を画しています。

一方、当初こそ40mm、20mm機関砲があったものの、後者はあとで撤去されました。それゆえ、武装は1門の40mm機関砲にとどまり、いささか火力不足感がありました。

3代目「そうや」へ

「そうや」は釧路を母港にしつつ、およそ半世紀近くにわたって、冬の領海警備と海難救助、流氷観測を担ってきました。レアすぎる砕氷巡視船として、オホーツク海の流氷域を進み、海氷観測する姿はもはや冬の風物詩です。

2009年には延命改修工事を行い、指揮通信機能やヘリ運用能力をアップデートしました。その結果、2011年の東日本大震災でも活躍しており、被災した現地の海上保安部に代わって、洋上の災害対策本部になりました。

ベテランはようやく引退(出典:海上保安庁)

しかし、艦齢にともなう老朽化は否めず、いたるところがボロボロのため、2025年度中には退役予定です。北方の守護神の名にふさわしく、最後まで北海道近海を守り抜き、これまで1,400人以上を救助してきました。

その後継に新たな砕氷巡視船を造り、2024年9月の進水式において、再び「そうや」と命名されました。3代目になるわけですが、船番号も「PLH01」を受け継ぎ、新型「そうや」として生まれ変わりました。

海上保安庁の知られざる規模や役割、自衛隊との違いは?
その組織・予算規模 日本は国土面積こそ38万平方kmと世界61位ですが、四方を囲む海洋面積で比べると一気に6位まで躍り出ます。この海洋面積は領海、そし...

コメント