北方の守護神として
海上保安庁といえば、巡視船・巡視艇で海上警備を行い、最近は尖閣諸島周辺を守るべく、南西方面に新型船を集中投入しています。
これに対して、長らく北海道海域の守りを担い、「北方の守護神」と呼ばれてきたのが、艦齢47年のベテラン巡視船「そうや」です。
- 基本性能:巡視船「そうや(2代目)」
排水量 | 約3,500t(基準) |
全 長 | 98.6m |
全 幅 | 15.6m |
乗 員 | 71名 |
速 力 | 21ノット(時速39km) |
航続距離 | 約10,500km |
兵 装 | 40mm機関砲×1 |
砕氷能力 | 最大1.5m |
艦載機 | 救難ヘリコプター×1 |
「そうや」は海保最古参の巡視船であるほか、南極観測船だった初代「宗谷」の後継になります。
初代「宗谷」は1962年に南極観測から退き、以後は砕氷船として能力を活かしながら、オホーツク海の警備を担当しました。戦力不足に悩む海保にとって、ヘリ甲板と砕氷能力を持ち、北方でソ連と対峙できる大型船は超貴重でした。
そんな初代の引退を受けて、海保は1978年に2代目「そうや」を造り、唯一の砕氷能力だけでなく、大型巡視船として初めてヘリ格納庫を備えました。
高い航空運用能力に加えて、数少ない大型巡視船であったことから、しばらくして船の番号が「PLH01」に変わり、1番船の栄光を与えられました。ちなみに、「PLH」はヘリコプター付きの大型巡視船という意味です。
冬のオホーツク海で活動すべく、「そうや」は速力と砕氷能力の両立を図り、時速6kmで進みながら、大きな船体を海氷に乗り上げて、約1mの氷を連続砕氷できます。当時の砕氷船と比べると、これは能力的には高く、過去には流氷で孤立した船を救助しました。
さらに、荒れやすい北方海域に対応すべく、新しい減揺装置や安定機能を組み込み、船の耐久性を強化するとともに、ヘリ運用時の安定性を確保しています。
また、希少な大型巡視船である以上、大規模な任務では旗艦にならざるを得ず、指揮通信機能、情報収集能力を強化しました。限定的とはいえ、戦闘指揮所(CIC)に近い部屋を持ち、従来の巡視船とは一線を画しています。
一方、当初こそ40mm、20mm機関砲があったものの、後者はあとで撤去されました。それゆえ、武装は1門の40mm機関砲にとどまり、いささか火力不足感がありました。
3代目「そうや」へ
「そうや」は釧路を母港にしつつ、およそ半世紀近くにわたって、冬の領海警備と海難救助、流氷観測を担ってきました。レアすぎる砕氷巡視船として、オホーツク海の流氷域を進み、海氷観測する姿はもはや冬の風物詩です。
2009年には延命改修工事を行い、指揮通信機能やヘリ運用能力をアップデートしました。その結果、2011年の東日本大震災でも活躍しており、被災した現地の海上保安部に代わって、洋上の災害対策本部になりました。
しかし、艦齢にともなう老朽化は否めず、いたるところがボロボロのため、2025年度中には退役予定です。北方の守護神の名にふさわしく、最後まで北海道近海を守り抜き、これまで1,400人以上を救助してきました。
その後継に新たな砕氷巡視船を造り、2024年9月の進水式において、再び「そうや」と命名されました。3代目になるわけですが、船番号も「PLH01」を受け継ぎ、新型「そうや」として生まれ変わりました。
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