日米豪印の同盟?クワッドとは何か簡単に解説!

クワッド アメリカ
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安保協力の枠組み

世界情勢の急変にともなって、日本は「日米同盟+α」に取り組み、イギリスとオーストラリア、フィリピンと準同盟関係を築きました。

こうした動きのなか、インドとの安全保障関係も深まり、日米豪の枠組みに連接させながら、4カ国による「クワッド(QUAD)」を創設しました。

定期的にニュースにクワッドですが、どのようなものなのか?

まず、クワッドは英語で「4つ」の意味を持ち、ダブル・トリプルに続く言葉です。

日米豪印の4カ国を指すわけですが、それは協力の枠組みにすぎず、決して「同盟」ではありません。通常の協力関係よりは強いものの、準同盟よりは格下にあたり、特定の問題に対する結束、協力的な姿勢をアピールする感じです。

その経緯をふりかえると、故・安倍首相が法の支配や民主主義を守るべく、日米豪印の4カ国を結び、「セキュリティ・ダイヤモンド構想」として提唱しました。これが「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」の基礎になり、地域の秩序と自由主義を守ることを目指しました。

ちなみに、FOIP構想は日本が提唱したにもかかわらず、アメリカの正式な対アジア戦略になるなど、国際情勢に与えた影響は計り知れません。

このFOIP構想に基づき、安全保障を中心に協議を開き、首脳・外相階段を定例化させました。いまや議題は安保問題に限らず、経済や気候変動、インフラ、疫病対策などの多岐にわたり、それぞれの分野で作業部会を立ち上げました。

以上の点をふまえると、通常レベルよりは関係深化を行い、一定の制度化に成功しました。

日米豪と印の温度差

ある程度は制度化したものの、クワッドは対外アピールの側面が強く、具体的な成果がそう多くありません。

4カ国の首脳・大臣が定期的に集まり、軍事面では共同訓練するとはいえ、それは準同盟からは遠く、日米豪とインドの間に温度差があります。

日米豪印は自由と民主主義、法の支配など、共通の価値観を持ち、対中国では同じく警戒する立場です。しかし、インドは伝統的に「非同盟・中立」を貫き、中国の台頭を警戒こそすれども、積極的に抑止しようとはしません。

また、ロシアのウクライナ侵攻を受けても、ロシア寄りの姿勢を変えないなど、日米豪とは対外政策が異なり、クワッドの深化に限界をもたらしてきました。

クワッドの首脳会談日米豪と印には温度差が(出典:首相官邸)

そもそも、インドの主敵は隣国・パキスタンであって、中国はその後ろ盾にすぎず、ロシアは軍事的脅威どころか、兵器と原油・天然ガスの購入先です。

ロシア軍はインドの脅威ではなく、中国海軍もインド洋に出没するとはいえ、台湾侵攻と対米抑止が優先事項である以上、インドの直接的な脅威にはなりません。

中国とはカシミール地方を巡り、長年の国境紛争は存在しますが、全面衝突に発展する可能性は低いままです。なぜなら、両国間にはヒマラヤ山脈が横たわり、ここを超えての軍事作戦はほぼできません。

だからこそ、インドはBRICSと上海協力機構にも加わり、非同盟・中立の立場を維持してきました。インド視点に立てば、クワッドは西側とのパイプのひとつにすぎず、そこまで重要とまではいえません。

したがって、日米豪と比べてインドの意欲は弱く、いろんな分野で協力はすれども、あくまで連携・協調の範囲からは出ず、日豪のような準同盟への発展はもちろん、対中・対露での具体的な行動は期待できません。

QUADの未来とは?

準同盟への発展すら望めず、インドの「やる気」がいまひとつのなか、クワッドの未来はどうなるのか?

現状では「通常以上、準同盟未満」ですが、インドが非同盟・中立を堅持する限り、望める最大限は「協商関係」でしょう。

協商とは特定の問題について調整を行い、協調・協力を取り決める関係性ですが、同盟のような「義務」はなく、外交面での支援がメインになります。

有名な例をあげると、第一次世界大戦前にドイツの脅威に対抗するべく、英仏露が三国協商をつくりました。ところが、露仏は同盟関係だったの対して、英仏・英露は協力関係(協商)にとどまり、外交手段による支援はすれども、参戦規定はありませんでした。

その後、英仏は事実上の同盟になったものの、英露協商は長年の不信感が拭えず、対独で同じ陣営に立ちながら、同盟関係には発展していません。

おそらく、クワッドの似たような内情になり、日米・米豪が軍事同盟を結び、日豪が準同盟になるなか、インドとは協商関係にとどまるでしょう。日米豪が軍事的連携を強めるのに対して、インドは一歩以上は引いた立場をとり、外交面での協力に徹するはずです。

少なくとも、台湾有事でインド軍が出っ張ってきたり、軍事支援を行う可能性は低く、日米豪が望めるのは外交支援ぐらいです。

ただ、外交的な支援に関しても、ウクライナ侵攻での態度を見る限り、期待できないかもしれません。

では、そんなクワッドは意味ないのか?

インドがグローバル・サウスの代表、人口14.5億の大国である事実をふまえると、その国際的な影響力は無視できず、関係強化はメリットをもたらします。

同盟、準同盟までは期待できなくとも、彼らをなるべくこちらに引き込み、中露側に傾かないようにせねばなりません。

こちらとの「関係」をつなぎ止める、外交的な「保険」にする視点で考えれば、クワッドの定例化・制度化は意味を持ち、決して無意味ではありません。

安保とその他で分けながら、前者は日米豪などの「やる気」のある国で取り組み、後者でインドとの関係を維持しながら、中露側になびかないようにすべきです。

インドの非同盟・中立政策が変わり、旗幟を鮮明にする事態にならない限り、現状維持に近い関係、あるいは協商関係が限界でしょう。

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