どこにあって、メリットは?特定利用空港・港湾とは何か

自衛隊のF-15戦闘機 外交・安全保障
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有事での緊急利用

中国の台湾侵攻、南海トラフ地震など、いわゆる「有事」の可能性が高まるなか、日本政府は自衛隊の基地だけではなく、民間空港・港湾施設の利用も視野に入れています。

これらは「特定利用空港・港湾」と呼び、普段は通常どおりに営業しながらも、緊急時は自衛隊や海上保安庁の拠点になる場所です。

自衛隊基地は各地にあるといえども、戦時では最初に攻撃されやすく、特に滑走路や港は優先的に狙われます。これはロシア=ウクライナ戦争でも変わらず、戦闘機の基地は序盤で攻撃されました。

そのため、航空機は離陸して空中待機したり、艦船も緊急出港するなど、いきなり全滅することを防ぎ、その戦力を温存せねばなりません。

ところが、上手く避難できたとしても、基地・母港の損害が著しい場合、一時的に別の拠点に移り、そこで作戦を続けるしかありません。このとき、別の基地が使えるといいですが、同様に激しく損傷していたり、想定地域の近隣になければ、民間拠点を借りる形です。

そこで登場するのが、先述の特定利用空港・港湾であって、あらかじめ政府が指定しておき、いざという時の役割を果たすべく、普段から受入れ体制を整えます。

F-15戦闘機鹿児島空港のF-15(出典:防衛省)

たとえば、港湾には護衛艦が接岸できる岸壁を築き、空港では整備・補給能力を準備する感じです。これらはインフラ整備であるとともに、安全保障に直結することから、国土交通省の予算ではなく、防衛省の関連経費に含まれます。

いずれにせよ、国が必要な予算を組み、公共インフラとして整備するものの、民間側の協力も欠かせません。

一時的とはいえ、自衛隊の運用拠点になる以上、事前に細部をすり合わせたり、実際の手順を確認しておく必要があります。いつもの民生利用に比べると、自衛隊や海保の運用はいろんな点で違い、平時からの共同訓練と調整を通して、違う部分には慣れておかねばなりません。

有事での管制はどうするのか、燃料補給はどのように行うのか。

既存設備はどこまで融通性、互換性があるのか。

さらに、各空港・港湾ごとに気象条件、あるいは地理的特性が異なり、これらを把握したうえで、有事での円滑な利用を目指します。

全国40カ所を指定

そんな特定利用空港・港湾ですが、現時点では計40カ所が指定されており、その内訳は「空港×14、港湾×26」となっています。

ご覧のとおり、北部と南西方面に集中するなど、ロシアの北海道侵攻とともに、台湾有事を強く意識しました。

※下の資料では山口宇部空港、仙台空港、青森空港、青森港が未反映。

特定利用空港・港湾出典:内閣官房HP

敵がミサイルの飽和攻撃を行い、各基地が機能不全に陥ると、自衛隊はこれらに分散展開しながら、防衛作戦を続けるつもりです。

むろん、すでに指定が公表されている以上、攻撃目標になる可能性は否めず、実際に自衛隊が展開すれば、相手も無視できないでしょう。

ただ、れっきとした軍事基地とは違って、あくまで民間施設であることから、序盤での攻撃はためらい、通常の基地よりは生き残りやすいです。拠点数が多ければ、その分だけ全滅リスクを分散しやすく、その後の作戦に大きな影響を与えます。

つまり、戦時の初期段階に限ると、高い生存性を期待できるため、基地機能の復旧までの「つなぎ」、または補完拠点になる予定です。

離島防衛が急務にもかかわらず、南西諸島方面は使える基地が少なく、この拠点不足を補うべく、既存インフラを活用するわけです。攻撃されるリスクをふまえると、地元住民の反対は当然でしょうが、非常事態で一刻を争うなか、既存設備を使わない手はありません。

なお、この特定利用は戦時に限らず、現地への災害派遣でも役立ち、救援部隊のスムーズな展開、支援物資の搬入につながります。

どんな風に使うのか

では、実際にはどのような利用になるのか?

まず、空港には戦闘機などが降り立ち、続いて整備・補給部隊がやってきます。その後、一時的な出撃拠点になったり、輸送機で空輸作戦を行う手はずです。

これが港湾になると、離島奪還用の部隊と物資、装備品を運び込み、重要な集積・後方拠点として機能します。

逆に住民保護の観点でいえば、特定利用空港・港湾は避難場所になり、安全圏に運ぶための拠点です。

このような緊急展開、住民保護を実現するべく、年数回は離着陸訓練や寄港を行い、普段の民生利用を妨げない範囲で課題を洗い出します。

高松港のイージス艦 高松港に寄港した海自艦艇

ここで気になるのが、自衛隊・海保以外の利用です。

いまのところ、在日米軍の使用は想定しておらず、この枠組みには参加していません。

しかし、自衛隊の基地と同じく、在日米軍の拠点を狙われるため、実際は緊急利用するはずです。この場合、事前交渉・調整をしないまま、いきなり米軍機が来ることになります。

東日本大震災をふりかえると、米軍は被災した仙台空港に突然降り立ち、空港機能を復旧させるとともに、トモダチ作戦の運用拠点にしました。当然、台湾有事でも似たことが起き、特に南西諸島の空港は有力候補です。

最近は米軍機だけではなく、イギリスの戦闘機が緊急着陸するなど、軍用機の「利用」が目立ち、あえて試しているとのウワサがあります。

その真偽はともかく、不測の事態が起きれば、地方空港に米軍機が降りる、外国艦船が入港する光景は増えるでしょう。平時の取決めはどうあれ、有事では一刻を争う以上、その場で柔軟な対応をせねばならず、断るのは現実的ではありません。

だからこそ、事前に在日米軍の利用も織り込み、彼らを枠組みに参加させるべきです。日本の自衛隊と比べて、米軍の利用は反対が多く、地元の理解を得にくいとはいえ、実際は米軍が無断利用する可能性が高く、それならば政府の責任において、最初から想定しておくべきでしょう。

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