ドローンを安く狩る!VAMPIREシリーズの魅力とは?

アメリカ
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安価に精密迎撃

現代戦ではドローンの進化がすさまじく、ウクライナ侵攻でその脅威が浮き彫りになりました。このロシア=ウクライナ戦争の教訓をふまえて、世界各国では対ドローンの研究が進み、多くの対抗手段と装備品が登場しています。

ミサイルでの迎撃は割に合わず、特に費用対効果が重視されるなか、アメリカで注目を集めているのが、L3ハリス社の「VAMPIRE(ヴァンパイア)」というシステムです。

このVAMPIREは吸血鬼ではなく、「Vehicle-Agnostic Modular Palletized ISR Rocket Equipment」の略ですが、日本語にそのまま直訳すると、車両に頼らないモジュラー兼パレット式のISRロケット装備になります。

なにやらよく分からないものの、要するに安いロケット弾を放ち、高性能な誘導システムを使いながら、正確にドローンを撃墜する兵器です。

ロケット弾といえば、安価に大量発射できる代わり、命中精度では劣る印象でした。ところが、VAMPIREは高性能な光学センサー、AI機能などをシステムに組み込み、レーザー誘導で高い命中率を実現しました。

攻撃ヘリの対地ロケット(APKWS)を使い、近接信管で撃墜する仕組みですが、有効射程は約5kmとされています。

VAMPIRE対ドローンシステム

また、システム一式は簡単に取り付けられるほか、サイズ的にはそこまで場所を占拠せず、ピックアップトラックの荷台に搭載可能です。トラックの荷台に乗せる場合、4発入りの発射機と関連機器を積み、あちこちをすばやく動き回り、高機動の防空兵器として活躍します。

なお、対地ロケット弾を流用した以上、ドローンの撃墜だけではなく、車両などの地上目標も狙えますが、こうした使い方は基本的には想定していません。

本当に安いのか?

では、実際にどのぐらいの費用対効果を誇るのか?

ロケット弾だけに限ると、1発の値段は約400万円とされており、システム全体をそろえるとなれば、さらに費用はふくらんでしまいます。それでも、地対空ミサイルよりは安く済み、歩兵の携行式ミサイルと比べても、約3〜5倍の価格差があります。

たしかに、小型民生品のドローンが多く迫るなか、全てロケット弾で迎撃するのはコスパが悪いでしょう。しかし、VAMPIREは迎撃手段のひとつにすぎず、他の対ドローン兵器と組み合わせながら、あくまで防空網の一部として働く形です。

加えて、センサー由来の状況認識能力を使えば、ISR分野(情報・監視・偵察)で移動する警戒監視所として役立ち、全体の迎撃態勢を補完できます。

ここで太平洋戦争をふりかえると、アメリカは日本の特攻機に悩んだ結果、艦隊の前方にレーダーピケット艦を置き、事前の警戒監視にあたらせました。ピケット艦は警戒監視が主任務とはいえ、突っ込んでくる特攻機の迎撃も行い、全体の防空に大きく貢献しました。

VAMPIREの役割もピケット艦に近く、優れた警戒監視能力で索敵しながらも、機を見て迎撃するわけです。移動式の警戒・迎撃拠点になり、全体の防空能力を補助することを考えると、損害防止の意味では安上がりでしょう。

シリーズ化で選択肢が増加

さて、VAMPIREはシリーズ化にも取り組み、その高いISR能力を流用しながら、他の火器と組み合わせました。ある車両は別のロケット弾を積み、別の車両は代わりに機関銃を搭載しています。

さらに、コンテナ式の固定防空兵器にしたり、小型艇やヘリで使えるタイプがあるなど、運用プラットホームが広がりました。選択肢の増加にともなって、迎撃戦闘での柔軟性が高まり、VAMPIREシリーズだけでひとつの防空網を形成できます。

すでに一部をウクライナに送り込み、現地の防空戦で戦果をあげていますが、実戦データの反映を通して、シリーズ化とその能力向上が期待されています。

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